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第11話
そういうや否や、塔矢に腕を引かれクラブを出る。大通りに出たところでタクシーを拾った。いつもなら歩いて帰る距離だが、塔矢は逃げられたくないから、と言って車内でも霧矢の手を離さなかった。
寮の裏手にタクシーをつけてもらい、窓から塔矢の部屋に入った。塔矢の部屋は1階の角部屋で誰にもバレることなく入ることが出来る。
部屋に戻ると同時に話し合うのかと思ったが、塔矢は温かい飲み物を用意して霧矢に渡してくれた。
塔矢が用意したのはホットミルクで、蜂蜜を少し垂らして、甘いものが好きな霧矢のためにいつも作ってくれたものだった。
いつもと変わらない味に安堵しつつ、塔矢はゆっくりと口を開いた。
「どこから、話せばいいんだろうね」
珍しく動揺したような口ぶりで、塔矢は話し始めた。それは霧矢も同じであった、あいつ話し合えと言っていたが、何を話し合えばいいのだろうか。
「お前は、あいつと俺、どっちを大事にしたいんだ」
自然と口に出た言葉がそれだった。だが霧矢にとってはそれが最も重要なことだった。
塔矢が自分を大事にしてくれるのか、自分を必要としてくれるのかが霧矢にとっては大事なことだった。
「そんなの、君に決まってるじゃないか。俺は君以上に必要な存在なんていないよ」
塔矢は霧矢の目を見つめながら、真剣な顔でそう言い切った。その瞬間冷えていた霧矢の心がじわじわと温かくなっていった。純粋に嬉しい、霧矢はそう思った。
「あの時ああ言ったのは君に他人のふりしてくれって言われてたからで、そうじゃなかったら君のことを守ってたよ。今更言っても言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、君との約束を守りたかったから。でも結果として君のことを傷つけた、ごめんね」
「あれは、俺も悪かった。自分で他人のふりをしてくれって言ったのに、お前にああ言われてすごく悲しくて……捨てられたんだと思った」
「俺が君のこと捨てるわけないじゃないか!」
「わかってる、でも勝手に傷付いて、怒って、悲しんで……悪かった」
こんな風に自分の内情を吐露できることに霧矢自身少し驚いていた、自分の中にまだこんな感情が残っていてことももちろんだが、塔矢相手にここまで素直になれることにも驚いていた。
「俺は、誰からも愛されないで育った。だから、何にも執着しないで生きようって思ってた。だけど、お前に出会ってから何もかも振り回されっぱなしで、こんなの俺じゃないって素直になれなかった」
「うん、」
塔矢はゆっくりと霧矢の話を聞いてくれた。話すのが得意ではない霧矢だから、自然とゆっくりになっていたが、塔矢は急かすことなく霧矢の話を聞いた。
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