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第7話 一夜明けて

目を開けると、いつもの小さなボロ屋の天井。 久しぶりに深い眠りについた。むしろ寝過ぎた。 「頭いってぇ……」 こんなに長く寝たのはいつぶりだろう。頭痛いし、変な寝相だったのか腰も痛い。 「えぇと…昨日、何を作ってたっけ…?」 そういや、息抜きでエッチな薬じゃないやつを調合しようと薬草をすり潰してたような…作業中に鈴の音がして… 「ッ熊!!──いってぇぇ!」 ガバッと飛び起きたら腰に激痛が走って悶絶した。 なんで俺、服着てないんだ。こんなに腰が痛いんだ。熊はどうなった?いや、そもそも誰が熊って…… 「無理して起き上がるな。俺が全部するから寝ておけ」 「……思い出した…俺、もしかして一線越えた…?」 「思い出せてないな。あの薬は二度と飲まない方がいいぞ」 血の気が引くとはこの事。俺は自分で作った新薬を大量摂取して、「水は…甕の中か」とあちこち探している男にみっともなく迫ったのだ。 身体がどうしようもなく疼いて我慢できなくなって。 「大変……申し訳…いててて」 「腰が痛いんだろう、いいから寝ておけって」 「…あの、飲み水はそっちの…そう、その樽から…ついでに薬品棚の引き出しの中にある薬を取って頂けると…」 「………また妙な薬を飲まないだろうな」 「何故か喉が痛いので炎症を止める薬を飲むだけです…」 「あぁ、なるほど」 納得されて気まずい。俺、本当に何をしでかした。 腰の痛みと尻の違和感からして男とヤッてる。確実にヤッてる。 記憶が飛ぶなんて、薬の効果か?だとしたら本当に注意が必要なものかもしれない。少量だけ試した時には気づけなかった。 「ノア、薬」 「ありがとう…」 ゆっくりと身体を起こしてもらって、紙に包まれた薬を確認したらちゃんと炎症を止める薬を選択出来たようだ。 さらさらと口に流し込んで手渡された水を飲んだ。俺はこの後どうしたらいい。 「………謝罪はするから、お帰り頂いて…」 「俺の子種が枯れ果てるまで搾り取っておいてつれないな」 「っ……それ、俺が求めましたか…」 「もっとしろと何度もせがんできたな」 記憶にない。全くない。 両手で顔を覆って前屈みになっただけで腰が痛んだ。もうほんとやだ。 俺は誰とも関わらずに生きていくはずだったのに、とんでもない弱味を握られた。しかも自分の身体を捧げて。損しかない。 「ノア」 「はい…どうしたら、許してくれますか…」 「俺達は、恋人同士だな?」 「……………くっ」 悔しい。恋人同士でもなきゃこんなに次の日に影響が出るまで盛ったりするもんか。俺は身持ちが固い人間のはずなんだ。 「それで、性欲減退の薬だが…」 「謹んで依頼承ります…ん?性欲減退?」 「俺はそれが欲しくて訪ねたんだが、それも忘れたのか?」 そういえばそんな事を言っていたような…? しかし、いつも求められている薬とは逆の効果か。興味深い。 「つまり精神安定が一番近いか?勃起させないようにする事が重要なら…いや、鎮静剤…薬草は…」 ブツブツと呟きながら頭の中で薬草を組み合わせるのは癖だ。無闇やたらに薬草を合わせても効果を打ち消し合うこともある。どの薬草を選択し、組み合わせ、飲みやすいように丸薬にするか液薬にするか… 「触れてこなかった組み合わせだな…この世界の薬草に望んだ結果が得られるか不安だが…試す価値はあるか」 この世界は、何かしら原作というものが存在する世界だ。効果によって薬液の色が勝手に染まったり、俺が元いた世界では有り得ない色形の草が当たり前に生えている。 それをひとつひとつ紐解いていくのが楽しいから苦痛には感じないが、どうにもエロ特化している世界なので逆効果の薬が上手く作れるかどうか。 「とりあえず調合してみるか……腰いってぇ…」 「…道具も取ってきてやるから、ベッドから離れるな。あと服を着ろ」 「え?…うわ」 「ある程度は拭ったが、風呂に入るか?」 「……」 うっかり薬の事で夢中になっていたが、掛けられた布の下は素っ裸だった。確かに拭いてくれたようだが、なんていうか…所々がカピカピというか… 「……外に、井戸があって、その近くに大きめの桶が置いてある」 「うん?それを持ってくるのか?」 「それが俺の風呂…だから、外で洗わせてほしいっていうか…」 製薬には清潔が必須条件だ。すぐにでも調合を試したいけど腰は痛いし、何故か肉体関係を持ってしまった男が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるし 「洗ってもらいたいっていうか…尻、触るの怖いし…」 「……はー…」 だって掘られた事はないんだ。どうなってるのか確かめるの怖いだろ。 目の前の男は俺が醜男でも腰が砕けるくらい相手したんだ。もう散々見ただろう。 「ノア。お前、俺の家に来い。製薬も出来る環境作るから」 「はぁ?何言ってんの」 「鈴の音が鳴る度に泣くくらい怖いだろ。恋人の家に同棲ならよくある話だ」 別に恋人ではないだろ…と突っ込みたかったがなし崩させたのは俺だ。 腰が砕けた俺は、何を言っても説得力がなかった。

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