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第9話 素性を知らない間柄
リオネルは身に付けている服装からして裕福そうとは思ってたけど、薬屋に直接来るくらいだから高位貴族に仕えてる立場なんだろとか思ってた。
「お、お前……貴族じゃん…」
「……ノアが自由に研究出来る場所を提供するにはこの規模じゃないと足りないだろ」
「は!?待てよ、俺を連れ込むのいつから計画してた!?ってか、最近買った屋敷かこれ!?」
「力を入れるな、首が締まる…」
俺が通っていた学園は首都にあって、断罪されてから逃げるように学園から離れて最終的に住処である山のある郊外の街に流れ着いた訳だが…
「それにしたって高いだろ、この規模は…そんな簡単に空いてる物件だって…」
「別荘として管理されていた屋敷を譲り受けただけだ。」
「ちょっと、家名なに?そんなポンと買えるの相当な高位貴族じゃん」
「俺の身分を明かすのは構わないが、ノアも自分の事を話すのが交換条件だな」
「…………やっぱなし。聞かないでおく」
広い敷地の中にこれまた大きな屋敷が建っている。なるほど、研究室を離れに建てるとか言ってただけある規模感だ。
「俺、山に帰してもらえる予定ある?」
「無いな。熊に襲われる危険のある場所に恋人は帰せない」
「恋人って言ってもさ…」
便宜上の名義って感じじゃん、と続けたかったがズンズンと歩くリオネルに「腰に響くから静かに歩け」と文句を言う方が先だった。
「急拵えで部屋も用意したから、足りない物は遠慮なく言って欲しい」
「……このシーツとか、全部新しく買い揃えたのか?」
「そうだが、素材が合わなかったか?」
腰が痛い俺をベッドに降ろしたリオネルが心配そうにしているが、素材が合わないどころか上等すぎるのが問題なんだ。
「こんなに金掛けたら俺の貯金がすっからかんにされる…」
「……別に何も請求する気は無いが」
「それは公平じゃないし、俺が気になる」
世話してもらう間、宿代分くらい払う気でいたんだ。腰痛は馬鹿にならないからな、数日続く事もあるし、変なクセついて繰り返すし…
「いいから、恋人に尽くさせてくれ」
「恋人に尽くす程度を凌駕してんだよなぁ」
そもそも、恋人ってなんだ。肉体関係はあるけど好きとかどうとかのやり取りは一切していないっての。
…腰が砕けるくらいの肉体関係は超えてるのなんなんだよ!!俺のせいだけどさ!!
「調薬や研究の為の設備は揃えるし、ノアが望む限りの材料も揃えるから」
「なんでそこまで……あ」
そうか。ようやく理解した。コイツ、自分が望む薬の研究に集中させて早く薬が欲しいのか。
金があっても存在しない薬は手に入れられない。だから俺に早く作らせたくて焦ってると。
「ノア?」
「まぁ、俺も研究が出来てウィン・ウィンの関係か……確認するけど、リオネルが欲しい薬は性欲減退だな?」
「…そうだが」
「単純に勃起させない薬がいい?それとも興奮しなくなる方向?」
そうと決まれば、俺の財布が痛まない内に薬作って出て行こう。どうせ夜逃げしようと思ってたから金さえあればまた一から揃えればいい。
「薬代は屋敷の使用料と相殺でいいよな、それだったら気が楽だ。」
「………ノアが楽ならそれで」
「……」
「ノア?」
「顔が良い男はジト目になってもカッコいいんだな」
なんとも羨ましい。
俺は薬の楽しさに目覚めてから部屋に引きこもりがちで不健康を極めた上に傷までついたから自分に自信がないどころではない。
リオネルには尻の穴まで見られたからもう今更かと思って隠してないけど、街を通ってる間はひたすら背中に顔を押し付けて隠さないと落ち着かなかった。
「俺は…誘われているのか?」
「うん?ところで今から調薬できる?腰に貼る湿布作りたいんだけど」
「はぁー…薬屋から湿布と痛み止めを買ってくるから、今日は安静にしてろ」
「それじゃ暇なんだけど…」
「いいから」
本も用意してやるとリオネルが言うので、とりあえず紙とペンを要求して俺はローブを脱いだ。上等なシーツの上では俺の服の素材すら浮いて見える。
誰にも見られないからと古着屋で適当に買ったシャツとズボンだからな…
「ほら、紙とペン。これで大人しくしてるな?」
「ん。ありがとう、忘れないように書き出しておきたかったんだ」
「安静にしておけよ。何かあったら部屋の外にメイドが控えてるから鐘を……いや、声を掛けるんだ。」
俺が鈴の音を異常に怖がるからか、ベッドのサイドテーブルに置いてあった鐘を回収してリオネルは部屋を出て行った。
「…鈴じゃないし、別に気にしなくていいのにな」
やっぱり良い奴なんだろうな。早く薬を完成させてやろうと俺はペンを構えた。
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