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第23話 目が覚めたら

「……りお」 「起きたか?」 目が覚めたらベッドに寝ている。温かいけど、相変わらずリオネルは俺にぴったりくっついてるんだなと苦笑いしたら顔に違和感があった。 「なんか、肌が引っ張られるような…いてっ」 「あちこち手当はしたばかりだ、安静にしてろ」 顔に触れようとしたら手首は痛いし、というか身体中が痛い。 顔に引っかき傷が出来てて、何かしら貼ってあるのか?そして全身の痛みは地面に打ち付けられたせい、か。 「馬車から投げられるのだけは勘弁してほしかったな…なんだかんだ、あれが一番痛かった」 「投げられた?」 「…リオネル、顔怖い。それよりあの後どうなった?ここどこ?」 ふぁ、と欠伸をしたら「まだ薬が抜けないか」と頭を撫でられた。 薬は多分、抜けた。普段から自分で治験しているから薬に対しての耐性は高い方だし。 …でも、頭を撫でられるのが心地よくて落ち着くから何も返さない。 「ここは俺の部屋だ。手当をして、ここに寝かした。ちゃんと全て終わらせたからノアはもう怯えなくていい」 「リオネルの部屋?………待って、リオネルは王子なんだよね」 「やっと知ったか。ノアも貴族のくせに俺を一切知らなかったとはな」 確かに俺は貴族だが、薬師になる夢を見つけてからは薬の世界にどっぷりで社交なんて興味無かった。 逃亡生活も、山の奥での生活もすんなり受け入れられたのは前世の感覚が影響してるんだろうな。 リオネルの身分が桁違いに上の人って理解しているのに普段と変わらず接してしまうのも。 「……全て終わらせた話、聞いていい?」 「交換条件がある」 「またか…どこにするのさ」 いててて、と呟きながら身体をリオネルに向き合わせた。ベッドの上で男二人、毎日こうして寝ていたというのに俺は恋人関係を頑なに否定していたんだ。改めて思うと滑稽だな。 いつも何かしら要求する度に顔にキスを降らせることも許してたくせに。 「唇に。」 「……………それは、交換条件がある」 「交換条件の交換条件か?」 ふ、と笑って目元を撫でるリオネルの手に安心する。 正直に言うと、騎士に押さえられていた面々がどうなったかなんて興味無いけど。物語の主人公と、主要な登場人物達が辿った結末を知りたいなと思う程度だ。 「だって初めてのキスは憶えてないし…口移しはノーカウントにしたい。…今からするのが初めてのキスって事にしちゃだめかな」 「……そんなに可愛く拗ねるな。俺は必死に抑えてるんだ」 俺に可愛いなんて感情抱くのは父様達だけだと思ってたわ。どうやらリオネルには特殊なフィルターがかかっているらしい。 ルリみたいな、ちゃんと可愛い男にそれを言うなら納得……しないな。というか助けに来た時にルリとリオネルは顔を合わせたんじゃ? 「リオネルさ、ルリを見て何も思わなかった?」 「………見るからに怪我をした状態で更に拘束までされて地面に転がされているノアを見て、殺したい衝動を抑えるのが大変だった」 「顔、怖いよ」 「仕方ないだろう。今も思い出す度に殺したくなる」 なるほど…生きてはいる、と。 愛と憎しみは真反対のようで、とても近い感情だ。物語の強制力で生まれた愛がそのまま反転したという事だろうか リオネルの険しい表情からルリへの情欲は一切見えない。 「──断罪した。」 「え…」 断罪、という言葉にはドキリとする。この世界で今、俺が一番恐怖する言葉かもしれない。 そんな俺にすぐ気付いて、額に唇が押し付けられた。 「…最初のキスは、まだとっておく。今は他の場所で我慢しよう」 「我慢って…ちょ、多いって!」 チュッ、チュッとわざとらしく音を立てながらキスを降らせるリオネルに腹が立つ。そもそも睡眠薬をすり替えて寝ていなかったなら、別れ際にしたマスク越しのキスも知ってるって事じゃないか。 そんな俺の心境を知ってか知らずか、リオネルは続けた。 「平民が、二度も貴族の殺害を企てたんだ。校内で起きる身分差によるトラブルはある程度まで大目に見られるが…生命に関わる以上、学校側もお手上げだ」 「……ルリは平民だったんだ」 「しかも国で有数の資産家だ。最初の事件の段階で学校も散々圧力をかけられている。……ノアール・ブルムリッジ伯爵子息、自分の影響力は自覚した方がいい」 「……」 本当に全部知られてたんだろうな、最初から。 俺はあまりにも周りを見ていなかったから、知らないうちに色々な事が起きては既に終わっている。 「ルリは…」 「今は城内の牢に入れられている。取り巻き連中も…牢に入っている者も居れば、自宅謹慎で済んだ者もいる」 「そっか。…バッドエンドだな」 「……あの平民の生徒も言っていたが、それはなんだ?」 うっかりと口を滑らせて後悔した。 ここは作られた物語の世界だとか言って信じてもらえるだろうか……俺の言うことなら信じそうだな、こいつ。 でもなと悩んでいると親指で唇を撫でられた。キスを脅しに使いやがって。話せばいいんだろ。 最初のキスは、ずっとお預けだ。

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