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「あのな、謝るくらいだったら早く……」
「慶 、まだ来られそうにない?」
教室のドアがガラガラと開いたかと思ったら、委員長の怒鳴り声にかぶさった男子の声が聞こえた。
委員長もぼくも視線を上げた。
この教室に入ってきた人の顔は涙でにじんで見えないけれど、委員長とバスケットボールを一緒にする約束をしているんだっていうことはわかる。
「勉強の付き添い?」
「おう、奏 か。次の3日後の小テストでいい点採れるようにしてくれってヤマ先から言われたんだ。悪りぃ、今日は俺、バスケ行けそうにないわ」
教室にやって来たその人は、『奏』くんって言うらしい。
その男子と話す委員長の残念そうな声がぼくの良心を襲う。
チクチク、ズキズキ。
物分りが悪いぼくのせいだと思えば、とても悲しくなる。
「ごめんなさい……」
ぼくはまた、小さな声で謝った。
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