4 / 89
☆
「慶、バスケ好きだもんね。でも慶、泣かしちゃダメだよ」
「だって、ものすげぇ楽しみだったのにさ、ヤマ先の奴が……」
「だからその役、僕が引き受けるよ」
――えっ?
予期してもいなかった突然の申し出に、ぼくはびっくりして目をパチパチさせたら、ほろりと涙がこぼれた。
「けど、お前は? バスケしなくていいのかよ?」
「うん、今日の体育バスケだったから。ちょっと飽きちゃって」
「そか、サンキュな!!」
自分の馬鹿さ加減に呆れているぼくの目は、悔しくて悲しくて涙がいっぱい溜まっている。
だから、目の前で何が起こっているのかわからない。
でも、ドアが開くガラガラっていう音と、ピシャンって閉まる音がしたから、委員長はグラウンドに行ったらしいことはわかった。
それでぼくはどうしたのかっていうと……。
「さて、君はどこで行き詰まっているのかな? えっと……」
ともだちにシェアしよう!