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でも、それだとぼくの気持ちが治まらない。
ぼくは首をブンブン振って金色くんにマフィンを渡す。
金色くんは、「ありがとう」とそう言って、やっぱりニコリと笑ってくれる。
……えへへ、嬉しいな。金色くんにマフィン、受け取ってもらえた。
それが嬉しくて、ぼくもニッコリ笑った。
ちょうどその時だ。
ガラガラ……。
「おっ、いたいた、奏。バスケしようぜ。お前がいないと慶の一人勝ちになっちまうんだよ」
別のクラスの男子が教室に入って来た。
「あれ? お前、またマフィンもらったんか? あいっ変わらずモテるなぁ。けど、その女子たちもたいがいだよな。お前が甘いもの苦手なの知らないんだからよ」
男子は面白可笑しそうにケタケタ笑った。
だけどぼくは同じように笑えない。
だって金色くん、甘いもの苦手って……。
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