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 金色くんの嫌いなものを渡してしまったぼく。 『待って』って言われて待てるわけがない。  ぼくは何も言わず、そのまま、まっすぐ走った。 「イチくん!!」  それなのに、金色くんはやっぱりぼくを追いかけてくるわけで……。  もう、放っておいてほしい。  どうせこの想いは届かないんだから、ぼくのことなんて放って、バスケでもサッカーでもすればいい。  だってこんな気持ちを抱いてしまったぼくは、とても気持ち悪いって思われる。  大好きな人にそんなこと、思われたくないよ。 「うえぇっ」  泣きながら、ぼくはまっすぐ家を目指す。  まっすぐ……。  まっすぐ……。  ひたすらまっすぐ、前だけを目指して……。 「待って、あぶなっ!!」  ごっちいいいいんっ!! 「ふぐぅっ!!」  突然、ぼくのおでこと硬い何かが衝突した。

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