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『欲しい』ってどういうことかわからないけど、でも……とっても恥ずかしいことだっていうことはわかる。
それでも大好きな人だから、お願いも聞いてあげたいって思うんだ。
イヤじゃないっていう証拠に、ぼくは顔を覆っていた手を外して、コクンとうなずいてみる。
「……痛いと思うんだ」
お願いしてきたのは金色くんなのに、ためらうように訊いてくる。
ぼくの見間違いだと思うんだけど、ほんの一瞬、うなだれた金色くんの頭の上に垂れた犬の耳が見えた気がした。
それがかわいくって、ついつい、にんまりしてしまう。
「だい、じょうぶ……」
きっと、金色くんなら、平気だと思う。
「ごめんね、できるだけ優しくするね」
「あの、あのでも!! ぼく、はじめてで……なにをすればいいのか、あの……わからない……」
「ただ両足を広げてくれるだけでいい。あとは他に何もしなくていいよ。イチくんのはじめてが嬉しい」
『嘘じゃないよ』
まるでそう言うみたいに、ぼくのおでこに金色くんの唇が触れる。
ちゅってリップ音が鳴った。
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