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第5話・大好きなのにっ!!
▽・w・▽つ〈いつつめ〉
「遅いなぁ~」
オレンジ色に染まった夕日の教室で、ぼくは大好きなあの人を待ってます。
あの人っていうのは、もちろん隣のクラスの金色 奏 くん。
何の約束もしていないけれど、『一緒に勉強』は暗黙の了解になっていて、その日の授業でぼくがわからなかったところをあらためて詳しく教えてくれる、とっても優しい王子様みたいな人なんだ。
見上げれば、壁に掛かっている時計はちょうど5時を差していた。
おかしいな、いつもだったら4時30分には金色くんがこの教室にやって来るのに。
何かあったのかな?
ぼくは、コツンとおでこを机に乗っけて目をつむる。
そして気づいたのは、付き合いはじめてから今まで、恋人らしいことはあまりしていないっていうことだ。
それに、ぼく――金色くんのこと、何も知らない。
クラスも別だし、家も正反対。
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