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☆
人気な先輩と、何をしてもダメなぼく。
どっちの言うことを信じるかって言ったら、そんなの先輩の言葉に決まっている。
金色くんとの仲がバレてしまう。
――ぼくはいい。
何をしてもダメダメなぼくは、今さらみんなの目を気にしたってしょうがないから……。
だけど、勉強も運動も、何でもできる金色くんが同性を抱いているって知られたら……。
「返事は明日。放課後、屋上で待ってるよ。一くん」
ボソリと耳元で告げられて、そこから意識が途切れてしまった。
「……っつ!」
…………どうしよう。
ぼくは机に突っ伏して、答えが見つからない質問を自分自身に投げかけ続けた。
「イチくんごめんね、先生に荷物運びを手伝わされちゃって……」
気がつけば、ぼくの目の前に益岡先輩はいなくて、優しい金色くんが立っていた。
外は真っ暗で、お月様が見える。
時計の針は6時30分を指している。
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