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 もう、ぼくの面倒は見なくてもいいって言わなきゃいけないんだ……。  ――それはとても悲しいこと。  考えただけでも胸がぎゅって締めつけられて苦しくなる。  だけど泣いちゃいけない。  金色くんには何ひとつ、心配なんてかけちゃダメだ。  これはぼくの問題だから……。  金色くんを巻き込んだぼくの責任だから……。 「金色くん……あのね」  両脇にぶら下げている手を握りしめる。  泣きそうになるのをこらえて顔を上げる。  金色くんは焼けるようなオレンジ色の夕日を背景に、優しい微笑みを浮かべていたけれど、ぼくの真剣な表情でそれも次第に消えていった。 「ぼく、他の人に勉強を見てもらうことにしたの」 「え? それって……だれ?」 「3年生の益岡先輩。とても優しく教えてくれるんだ。だから……金色くんはもういいよ。さようなら」  これで終わった。金色くんとは最後だ。  もう会えない。

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