59 / 89
☆
ぼくは金色くんから背を向けた。
ズキズキ痛む胸に合わせて涙があふれてくる。
益岡先輩に会うため、『廊下を走ってはいけない』っていう校則を破って教室を出た。
これで金色くんとはお別れだ。
優しくてカッコいい金色くんは、お似合いな優しい美人な彼女さんをつくって、そうやってぼくはひとり、ずっと金色くんを想い続けるんだ。
走りながら絶望に暮れていると――……。
だけど事態はぼくの思い通りにならなかった。
「待ってイチくん、それって、どういうこと?」
ぼくの後ろ。すぐそこまで、金色くんが迫ってきていた。
「うぇっ!?」
やだっ。
なんで金色くんは追いかけてくるの?
だって、ドラマだったらホラ、ヒーローはヒロインの言葉に放心したまま動かないとか、逆ギレして、『ああそうかい!!』とか投げやりになったりするハズなのにっ。
ぼくは益岡先輩がいる屋上目指して一気に駆け上がった。
ともだちにシェアしよう!