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 金色くんから逃げるのに必死だから、目に浮かんでいた涙はいつの間にか引っ込んでいる。  運動も苦手なぼくなのに、運動も得意な金色くんからなんとか逃れることができた。 火事場の馬鹿力ってこういうことを言うのかもしれない。  息を切らして汗をかきながらも、なんとか金色くんに捕まらず、1階のB組から屋上までたどり着くことができたんだ。  屋上までもう少しっ!!  非常階段から屋上に続いている、茶色い錆びかけている鉄のドアを開けた。  ――んだけど……金色くんはすぐ後ろまで追いついてます。  どうしよう、  どうしよう、  どうしよう!!  なんて思っていると、柵の前に背が高いすらりとしたシルエットが見えた。  益岡先輩だ!! 「せんぱいっ!!」  金色くんから逃れるため、先輩の胸にダイブする。 「うわっ、一くん!?」  びっくりしたのは先輩だ。  だって、脅された先輩の腕の中に自分から進んで入っていったんだから……。

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