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 体が反転して、お尻の中にあった金色くんが取り除かれた。 「……っふ」  泣き叫んだ口がやわらかい何かに塞がれ、それでも少しして口が解放されると、ぼくはまた泣きはじめる。 「ごめんなさい、ごめんなさい、嫌わないで。ごめんなさいっ!! ぼく、男でごめんなさいっ!! 好きになってごめんなさい、ごめんなさいっ、ごめっ……!!」  何度も何度も、謝るぼくの体はギュって包まれた。  あたたかな、優しいこの腕は誰のものか知っている。  びっくりして泣くのも忘れると、静かな空気の中でひとこと、ボソリとつぶやかれた。 「おバカ……」って――……。 「やっぱり昨日の、立ち聞きしてたんだね」  半ばパニックになるぼくの頭上から、益岡先輩の声が聞こえて、その言葉に驚きを隠せない。 「ええ、バッチリ」 「かな、いろく……?」  もしかして、ぼく、嫌われてないの?

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