77 / 89
☆
体が反転して、お尻の中にあった金色くんが取り除かれた。
「……っふ」
泣き叫んだ口がやわらかい何かに塞がれ、それでも少しして口が解放されると、ぼくはまた泣きはじめる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、嫌わないで。ごめんなさいっ!! ぼく、男でごめんなさいっ!! 好きになってごめんなさい、ごめんなさいっ、ごめっ……!!」
何度も何度も、謝るぼくの体はギュって包まれた。
あたたかな、優しいこの腕は誰のものか知っている。
びっくりして泣くのも忘れると、静かな空気の中でひとこと、ボソリとつぶやかれた。
「おバカ……」って――……。
「やっぱり昨日の、立ち聞きしてたんだね」
半ばパニックになるぼくの頭上から、益岡先輩の声が聞こえて、その言葉に驚きを隠せない。
「ええ、バッチリ」
「かな、いろく……?」
もしかして、ぼく、嫌われてないの?
ともだちにシェアしよう!