85 / 89
☆
でもね、約束もしていないのに大好きな人に朝から会えたんだもん。
ニマニマしてしまうのは仕方がないよね。
締りがない気持ち悪い顔を金色くんに向けると、金色くんも口元をほころばせて、ニッコリ笑ってくれる。
うわわ、とっても優しい笑顔だ。
こうやって大好きな人と笑い合えることが嬉しくて、幸せで胸がいっぱいになった。
鼻の奥がツンとして、思わずウルってなる。
そんな時――……。
「おっはよう、一くんっ」
「うぇっ!?」
突然反対方向から声をかけられ、振り返ったら、同時にぼくの頭はすっぽりと包まれてしまった。
「あ~、今日も可愛いねぇ、一くんはっ」
この鼻にかかった声の人はそう――何を隠そう益岡先輩だ。
どうしてか、あの屋上での一件からこっち、ぼくは先輩に付きまとわれている。
これが、ぼくの、最近の日課になりつつあることだ。
ともだちにシェアしよう!