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第ニ十一章:其の一:外伝 三章 ちびの場合
一人で心細い、どうしよう。
ずっと白くて、寒くて、ここがどこなのかも分からない。ここで待っててって言って、おかあさんがいなくなってから、どれくらい経ったの?
待っても待っても、おかあさんは戻ってこない。
おかあさん、──呼んでも返事は返ってこなかった。
もう寒くて死んじゃうかも、手足も動かない、誰か助けて──。
やっとの思いで出した声に、あたちのおっさんが反応してくれた。
「大丈夫か?」
大きな手があたちの身体を掴んで、引きずり寄せる。こんなに大きくてあったかいものがあるなんて、知らなかった。
でも、信用して大丈夫なの? このおっさん、あたちを食べようと思っていない?
「しゃーっ!」
精一杯威嚇してみたけど、おっさんは気にしない風で、あたちを胸に抱き寄せる。
「もう大丈夫だからな。」
あたち、人間の言葉なんて分からないなのよ。
でも、そのなんて言ってるのか分からない言葉に、なんだかホッとした。
大きくて温かい手、安心する鼓動に抱き寄せられて、なんだかおかあさんを思い出す。
おかあさんはどこに行ったんだろう。ほかのきょうだいを連れてくるからねってそう言ってたのに、おかあさんは来なかった。
あたちの身体を温かいなにかがずっと、抱いていてくれている。背中を撫でてくれる優しい感触に、おかあさんを思い出した。
もしかして、おかあさんが帰ってきたの?
目を開けてみれば、そこにはおっさんしかいなかった。ぼっさぼさの黒髪に細い目で、汚いひげを生やしたおっさんがあたちの様子をじっと見ている。
そんな目をしたって、こわくないんだから!
「しゃー!」
おっさんの手の中で、あたちはもう一度威嚇した。
あたちを離しなさいよ! この変態! あたちはおかあさんを待っているんだから。
でも、あたちは、おっさんの手の中でおかあさんにはもう会えないような気がしてた。
だって、お外はものすごく寒かったから。
あたちみたいに、動けなくなっちゃったんじゃないかって、そんな気がした。
「威嚇できるなら、大丈夫だろうかね。でもまだ身体が冷たいな。」
温かい橙色のそばに座ったおっさんが、あたちをずっと抱いている。あたちは心細くなって、おっさんの手のひらに爪を立てて丸まった。おかあさんが恋しいのに。傍にいるのはこのおっさんだけ。
翌朝、かごの中に突っ込まれたあたちは、知らないところに連れてこられて、おっさんを睨みつけた。
やっぱりあたちを食べる気なの?
知らないじぃちゃんになにかを刺されて、痛かったからおっさんの手を噛んでおいた。
「きみは、今日からちびだよ。」
おっさんは困ったようにあたちを見下ろして、ちび、とゆっくりと伝えてくる。
ちび。
悪くない音だと思った。
あたちはこうして、「おぎくぼちび」になったの。
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