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第ニ十一章:其の三:外伝 三章 ちびの場合
「また様子を見に来るよ。──ああそうだ、高梨はきみに、良い風を持ってきてくれたかい?」
おじぃじはおっさんを振り返ると、そう聞いた。たかなしと知り合いなの? じゃあ、早くたかなしを連れてきなさいよ!
最近は全然来ないんだから。
あたちもおっさんも、たかなしが来るのを待っているのよ。
「そうといえばそうかもしれませんね。」
おっさんは曖昧な返事をして、おじぃじを見送るために腰を上げた。曖昧なふりして、なんなのよ。
素直に嬉しい風だったって答えればいいのに。
人間はなんて面倒くさい生き物なのよ。
重たい足取りで二人が玄関に向かうから、あたちも一緒について行く。万が一、万が一よ、おっさんがおじぃじに傷つけられたら助けてあげないとね。
尻尾をたてて付いてきたあたちを、おっさんが慌てて抱きあげる。
なによ、外に出ると思っているの? あたちはお外が寒くて怖いところって知ってるなのよ。
「お見送りありがとう。──ほう、これは随分きれいな青い瞳だな。いい猫じゃないか。」
おじぃじがあたちをまじまじと見ると、そう褒めてくれた。褒められるのは悪くないのよ。ただ、あたちは「ちび」っていうのよ!
「康路くん、また様子を見に来るよ。」
おじぃじはそう言うと、静かに玄関の戸を閉めた。
おっさんはしばらくそのまま玄関に立っていて、なにかを考えているようだった。
あたちはおっさんの、無精髭に手を伸ばす。
ぐい、と爪を立てると思っていたよりも柔らかいほっぺに、爪が食い込んだ。
「いたたた!」
そう言いながらも、おっさんはあたちをゆっくり降ろす。いつまでもあたちを拘束しているからよ。
そんなにたかなしを待ってるなら、自分で動きなさいよ。
ほら、あの黒猫のいるおばちゃんのお店に行くとかしたら、いいのよ。
痛がるおっさんを横目に、あたちは自分の爪の手入れを始めた。おっさんの髭が爪についてたら、困るなのよ。
おっさんは本当に、頭でっかちなのよ。
考えるだけで生きていけるなら、あたちも考えてれば生きていられると思うのよ。
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