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10、何ができるのか
ふ、と目が覚めたとき、辺りはほのかに明るくなっていた。徐々に視界が暗闇に慣れてきて、フィリオの部屋のベッドの上にいるんだって分かった。体を重ねたあと気を失ってしまったようだ。ちらりと隣を見るとフィリオが眠っていた。その姿も何だか様になっていてちょっと腹立たしい。
左の薬指がじんじんと痛みを訴える。
契約をしてからしばらくはこの痛みと戦うことになると聞いたことがあるけど、いつ痛みはなくなるんだろう。
手をかざし、薬指をぐるりと囲むように刻まれた契約の印を見て、深くため息を吐いた。
この国は「魔法」の力で序列が決まる。
力が強ければ強いほど確かな地位が約束される。そして、本来は精霊としか契約が結べないはずなのに、他者を強制的に従わすことができる魔法使いもいる。精霊との契約はわりと対等だけど、対人間だと強制力が増す。主人の気持ちひとつで激痛を走らせることもできるらしい。
「…やっぱり奴隷、か…」
ぽそり、と呟く。
嫁、だなんて周りに言っている癖に、やっていることは結構えげつない。これで本格的に俺はフィリオから逃げられなくなったということだ。死ぬまでこきつかわれて、ぼろ雑巾のように捨てられるんだろう。
少しでも長生きするためには、フィリオの役に立たないといけない。でも俺に何ができるだろう。
「…、わ?!」
ぐるぐると悩んでいると、突然抱き寄せられた。腰も足も頭もガッチリと押さえられて、身動きがとれない。
「な、な、なん、」
「……起きるには、まだ早い…もう少し寝ていろ…」
「く、苦しい」
「慣れろ…」
無茶苦茶なことを言う!
でも物理的にも精神的にも逆らう術を奪われている現状では、どうすることもできない。ただ言うことを聞くしかない。
「…(起きたら、何をしたらいいのか聞いてみようか…でも聞かないで自分で動いた方がいいのか…?)」
そういえばエイミとイル、だっけ…
あの二人ならフィリオのことも詳しそうだった。話した感じでは、俺に嫌悪感は抱いてない様子だったし、聞けば答えてくれるかも。
俺は息苦しさに目眩を覚えながらも、ゆっくりと意識を手放していった。
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