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9、誓約を受け入れる ※

「…っ、フィリオ、も、無理…っ」 「何だ、音をあげるのが早すぎないか?」 何度達せられたのか分からない。 分かるのは、俺の出した精液でベッドのシーツがぐちゃぐちゃになってしまったことと、フィリオがまだ達してないということ。 フィリオが俺に求めてきたことはひとつだけ。「お前は何もするな」と命じられ、奉仕しなきゃいけないと思っていた俺の予想は大きく裏切られた。まぁ、しなくていいに越したことはないんだけど…。尚更、俺を…そういうことに長けている男娼を買った意味が分からない。 「フィリオ、も…やだ…」 「俺が言ったことを忘れたのか」 「忘れて、な…っひ、ぁ!」 「この身体も、声も、思考も…すべては俺のものだ」 「っ、ん、っあ!ぁ、あぁ…」 指で前立腺を擦られる。激しく動かされる指に身体は浅ましく反応する。脳内が焼き切れそうな快感に酔ってしまう。 「俺は、フィリオ、の…っ」 「そうだ。お前は俺だけのことを考えていればいい」 部屋に淫猥な音が響く。 腰が自然と揺れ、もっと絶対的な質量が欲しいと後孔が収縮する。 「フィリオ…っ、も、ほし…っ」 「…随分と蕩けた顔をしているな」 背中にちゅ、と口付けられ身体が跳ねる。 今までの客は前戯なんてほとんどしてこなかったし、ましてや口付けたり、撫でたりといった優しさを見せられたことがない。 「なん、なんで、優しく、するんだ…っ」 「優しい? 全く…店でどんな扱いを受けてきたんだ…」 指が引き抜かれ、ぴたりと熱いものが当てられる。待ち望んでいたそれが当てがわれたことで、身体は期待に震え、受け入れる体制が整う。 「っ、っ、ぁあ!あ、あっ、ぁ…!」 「くっ、すごい締め付け、だな…っ」 ぱちゅんぱちゅんと濡れた音が響き、嫌でたまらない行為のはずなのに、焦らされ、待たされたせいなのか、媚薬を飲まされた時のように感じてしまう。 「っや、いやだっ、おかし、おかしく、なる…っ」 「おかしくなればいい」 フィリオが後ろでにやりと微笑むのが分かった。そして、左手の甲を包み込むようにフィリオの手が重なる。 そのじんわりとした温かさに目を細める。 しかし、次の瞬間、 「っ?!あぁっ、い…った…!」 「我慢しろ。すぐに収まる」 左手の薬指の付け根に尋常じゃない痛みが走った。涙がこぼれる。一体何が起こったんだろう。 「泣くな。誓約の印を刻んだだけだ」 「誓約の、しるし…?」 でもそれは、主人と奴隷が結ぶための… やっぱり俺は人以下の存在としてここに置かれるために囲われたのか。 フィリオの温かさと、快楽を与える熱さに酔いしれていた俺の頭は、サァ、と血の気が引いていくように冷えていくのが分かった。

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