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11、仕事をください!①

奴隷になったのに自由があるなんておかしな話だけど、特に繋がれてるわけでもないし、俺は眠るフィリオの腕から抜け出して屋敷内を探索することにした。 「ひとまず…あの二人を探そうかな」 昨夜刻まれた印がジクジクとした痛みを訴えてくる。フィリオが俺を労働力として買い取ったという事実…でも、俺に何ができるだろうか。 「……あ」 屋敷内を歩いていると、庭で落ち葉掃きをしているエイミを見つけた。鼻歌まじりに掃いていて楽しそうだ。 「あ、あの、…エイミさ、…エイミ」 「え?奥方様!どうなさったのですか?こんな所まで…あっ、歩いても、もう大丈夫なのですか?もしかして道に迷われましたか?分かります、この屋敷広いですものね。私も勤め始めはよく迷っていました。無駄に広いんですよねこの屋敷って。旦那様の見栄、…こほん、金にものをいわせた作りですよね」 矢継ぎ早に繰り出される言葉に呆気にとられていると、エイミは恥ずかしそうに頬を染めた。 「いやだわ、私ったら。奥方様に声をかけていただけた嬉しさで、つい」 「あ、いや、その…大丈夫だ」 「そうですか?ふふ、奥方様がお優しい方で良かったです!」 「あ、はは…って、あのさ、エイミ」 「はい、何でしょうか」 「俺にも何かできることない?」 気圧されつつも本来の目的を伝える。 するとエイミは、一瞬キョトン、としたあと、困ったように微笑んだ。 「奥方様にお仕事をしていただくわけにはいきませんわ」 「でも…何かしたいんだ。フィリオだってきっと、何かさせるために俺を連れてきたんだよ」 「旦那様がですか? いえ、でも…、…んー…」 エイミは目をつぶり、少しの間考え込んでからパッと顔を上げた。そして、なぜかいたずらっぽい笑みを浮かべながら俺の手を握ってきた。 「では、奥方様。お願いしたいことがあります!」 「う、うん。何?」 「こちらに来て下さい!」 そう言いながら、エイミは俺を調理場の方へ連れていった。

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