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20、内緒の宝物
しばらく経ったあと、やけに豪華なトレイにたくさんの食べ物を乗せたイルが現れた。
サンドイッチと飲み物と…名前がよく分からないような(たぶん高い)食べ物がところ狭しと机に並べられる。
「な、なんか、量が多くないか?」
「旦那様が、"ニィノは痩せすぎだ。とにかくたくさん食べさせろ"と仰ったので!」
「な、なるほど…」
そういえば、前にエイミの勘違いで医者に診てもらったとき、栄養不足って言われたんだった。
「お食事が終わりましたら、またさっきみたいにお呼びください!あ、あと、部屋の隅の、あそこです、箱がたくさんある…」
「ああ、あれ…って、何?」
「旦那様からのプレゼントです!好きに選んで大丈夫みたいですので、どうぞ手にとってみてくださいね!」
「プレゼント…?」
「それでは、僕はこれで!」
イルはニコニコしながら去っていった。
もう少し具体的に聞きたかったけど、まぁいいや。自分で見ればいいだけだし。
「…気になるから、先に見ておくか」
立ち上がり、箱の山の元に行く。
大小さまざまな大きさの箱が1、2、3…
10個以上ある。多い。
「服…と、何だこれ、装飾品?」
中身はどれも同じような感じだったけれど、最初に渡された服よりあまりヒラヒラしていない。
「あ、これなら着ても、」
箱から1枚服を取り出して持ち上げる。
生地のさわり心地がサラサラしていて良さそうだったので持ち上げたら…、…だいぶ透けていた。向こう側が見える…。
見なかったことにして、そっと蓋を閉じた。
「フィリオの奴…!!」
でもまさかシャツ1枚のままで過ごすわけにもいかないから、仕方なくあまり華美ではなく、透けてもいない服を身に付けることにした。
それにしてもフィリオは着せ替え趣味でもあるんだろうか。悶々と悩みながらシャツを脱ぐ。すると、ふわりと、フィリオの香りが鼻をくすぐった。
「…あ…そうだよな、フィリオのシャツ、だもんな…」
脱いだシャツをそっと抱きしめる。
着せ替え…別にフィリオがしたいなら…
…いやいやいや!ない、ないな!
「ほ、他の、見よう…!」
誰が見てるわけでもないけど、無性に恥ずかしくなってしまった。選んだ服に着替えて、他の箱を開けまくる。
慌てながら開けたため、一つの小箱が手元からこぼれ落ち、ゴトリとした音を立てて中身が飛び出てしまった。
「わっ、と…、なんだこれ、ペンダント?」
丸くて大きめのそれを持ち上げ、側面の突起を押す。すると、カチリとした音と共に開いた。
どうやらロケットタイプのペンダントのようだ。
「…きれいだな」
外側の装飾に光を当てるとキラキラする。
まるで夜空を写し取ったようで、じっくりと眺めてしまう。
「…そうだ」
立ち上がり、ベッドの近くに置いてあったフィリオからのメモを手に取る。そのメモを小さく小さく折りたたみ、ロケットの中に、そうっと忍ばせる。
「…へへ」
自分が着せ替え人形だろうと、玩具だろうと、ペットだろうと、別に何だって構わない。いつか捨てられてしまうとしても、俺にはフィリオの記憶が残るんだ。それなら、フィリオとの思い出のものをたくさん取っておきたい。
目の前にペンダントを掲げながら、秘密の宝物を得たことに、ひっそりと喜びを感じた。
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