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23、仮初めの家族①

「…。俺も何か、手伝った方が」 「いい。エイミたちがやっている」 「そ、そっか」 ふわふわした気持ちのまま、目線を反らす。 キスをされるのは嬉しいけど、苦しい。 こんな風に優しく触れられたら、どんどん惹かれてしまう。離れがたくなってしまう。 「服は気に入ったか」 「え、あ、うん。ありがとう。…って、いうか…何かすごい透けてるのとかあったんだけど」 「ああ、あれか。あれは昼間には着るなよ」 「…と、いうことは」 「もちろん、夜の営み用だな」 「絶対着ない!!」 「なぜ」 「はっ、恥ずかしいし…!」 「そうか、なおさら着せたくなったな」 あまりの言いように絶句していると、フィリオは意地悪そうにニヤ、と口元を歪めた。 ** その後、何を着るとか着ないとかで会話をしつつ、食堂へと向かった。扉を開けると、そこにはすでにジルベルトとリディがいた。周りにエイミとイル、メイドたちもいる。 「ニィノ義兄さま、今日は突然押し掛けてごめんなさい!でもお夕飯をご一緒できて嬉しいです!」 「ええと…ありがとう。俺もフィリオの妹さんには会ってみたかったから」 「まぁ!そうなのね、光栄です!」 「いいから席につけ」 フィリオに促され、リディたちの前の席の近くに立つ。リディはニコニコと上機嫌だ。 「さ、奥方様、こちらへどうぞ」 エイミも嬉しそう。 椅子を引いてくれたので、おそるおそる席に座ってみる。 「聞いてください、ニィノ義兄さま!兄さんったら、私が嫁ぐとき『エイミとイルを連れていきたい』って言ったら、却下してきたの!」 「当たり前だ。俺の家の召使いをなぜ他所にやる必要がある」 「ケチだわ!いいじゃない、私たち仲良しなんだから!」 「…」 フィリオは眉間に皺を寄せながらエイミを呼び、何か耳打ちをした。 「はい、分かりました。持って参ります。リディ様、またあとで…」 「ああ、エイミ!もう行っちゃうの?!」 「ごめんなさい、…それでは」 二人とも名残惜しそうに目線を交わす。 本当に仲がいいんだな。 「兄さんったら酷いわ」 「俺の召使いをどうしようと俺の自由だ」 「横暴…!」 「フィリオ、あまりリディをいじめないでおくれ。僕も悲しくなってくる」 「勝手になっていろ」 相変わらずフィリオは二人に対して冷たい。 どうしてなんだろう。 運ばれてきた前菜を見つつ、ちら、とフィリオの横顔を盗み見る。うーん、不機嫌。 「ジル、何か違う話題を提供しろ」 「これはまた無茶振りを。…まぁ、いいさ、じゃあ奥方様関連の話をしようか」 「え」 思わぬところから自分のことが取り上げられることになってしまった。やめてほしい。 「今度、奥方様の魔力測定をする予定だよ」 「魔力、測定…?」 「そうだよ。どれくらいの魔力があるのか知りたいからね」 「俺、魔力は無いと思いますけど…精霊とか妖精見たことないし」 "魔法"は、精霊や妖精と契約を結ぶことで得ることのできる不思議な力だ。でも、契約をするのだって生まれ持った魔力が必須で…俺みたいに魔力を持たない奴だっている。 「それは…幼い頃に封じられたからだと思うよ」 「…?」 「はは、今度 授業で教えてあげるね。解呪もその時で構わないかな?フィリオ」 「構わない」 俺を置いて話がどんどん進んでいく。 封じられた? 解呪? 何の話だろう。 「まずは、せっかくのご馳走をいただくとするかな」 「そうね、ジル。ここの料理長の腕はとっても素晴らしいんだから!デザートも楽しみ!」 「そうだね。はしゃぐ君も可愛いよ」 「うふふ、ありがとう」 目の前でのろけられて、その桃色な空気に苦笑するしかない。こんな風に大っぴらに仲の良さを見せつけられて、ちょっとだけ羨ましいかもしれない。

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