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24、仮初めの家族②
ちら、と隣に座るフィリオに目を向ける。
フィリオと俺が桃色な空気…あんまり想像できないな。
というか、フィリオは相変わらず不機嫌そうに眉間に皺を寄せている。
そんなに兄妹仲が悪いんだろうか。
リディの態度を見る限り、そんなに険悪には見えないんだけど…
「何だ」
「あ、いや…何でそんなに不機嫌なのかな、と思って」
「いつも通りだ」
いや確かにフィリオは常時笑ってるような、朗らかなタイプじゃないけどさ。
「ははは、フィリオは奥方様がリディに盗られないかヒヤヒヤしているんだよ」
「え」
「いやだわ、兄さん!そんな風に思うのって、ニィノ義兄さまに失礼よ!」
「勝手に推測して勝手に怒るな」
盗られる?
誰が?誰に?
「俺がリディに…?」
「違うと言っている」
「フィリオが欲しいと思っているものは、みんなリディに寄ってくるんだよ。富も権力も…ああ、そうだなぁ、もっと簡単なことに例えると、フィリオって猫が好きなんだけど、飼ってもなつくのはリディになんだって」
「そ、そうなんですか?」
飼っていた猫…
やっぱりペット扱いなんだな、俺は。
「富も権力も自力で勝ち取った。猫は知らん」
「またまた、意地張って…」
「黙れ」
「フィ、フィリオ、その、落ち着いて」
どんどん表情が険しくなっていく。
前にフィリオはジルベルトのことを「人間性に問題がある」って言ってたけど、確かにそうかもしれない。よく堂々とフィリオをからかうようなことを言えるなと思う。
「どんなペットを飼っても、結局はリディの元に行ってしまっていたらしいじゃないか」
「そもそもこいつをペット扱いした覚えはない」
「え」
「おい、ニィノ。何だその意外そうな顔は」
「兄さんったらニィノ義兄さまを飼おうとでもしてるの?!」
「してないと言っている。話を聞け」
その言葉に複雑な気持ちになる。
ペットにすらなれないなら、俺の存在価値はどこにあるんだろう。
「それならいいけど…もう、ジル、大袈裟に言ってるわね?あまりからかうようなことを言ったらダメよ」
「ん?ああ、ごめん、愛しいリディ。フィリオをいじると面白くて、つい」
「…今度から出禁にするか」
「それじゃあ奥方様の家庭教師が出来ないじゃないか」
「…」
さっきまでの桃色な空気が嘘のように、今度は張りつめた緊張感が漂う。おろおろしていると、部屋の扉が開いた。
どうやら主菜が運ばれてきたようだ。
「お、おいしそうだな」
「ええ、そうね、ニィノ義兄さま!」
「ニィノ」
「え、な、何?」
「ジルの言葉を鵜呑みにするなよ」
「え、あ、えっと…」
「俺の言葉を信じろ」
「わ、分かった」
珍しく力強く念を押すように言われ、たじろぐ。
「だいぶ執心してるようだね」
「お前には関係のないことだ」
「はは、まぁそう言わず。奥方様、どうか僕をクビにしないよう、ご主人に頼んでおくれ」
「え、えっと…」
困ったようにフィリオを見ると、ぐい、と腕を引かれ、耳元に口を寄せられた。
「…、お前の見える世界が、俺だけになればいい」
そして告げられた言葉が、やけに熱を持っているように感じたのは、俺の願望なんだろうか。
その後に目の前に置かれた美味しそうなケーキの味は、…よく覚えていない。
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