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25、過去との再会

浮わついた気持ちのまま夜になり、俺は何だか疲れてしまって、部屋のベッドに寝そべっていた。フィリオとジルベルトは仕事の話、リディはエイミとおしゃべりしてるらしい。 要は、俺だけ暇になったわけで。 …そもそも食事の席で、フィリオは一体どういうつもりでああ言ったんだろう。 「…フィリオだけ…」 もうすでに俺の心の大半を占めているのに、それでもまだ足りないって言うのか。貪欲だ。 「まぁ、自分のものが勝手なことするのが嫌なだけか…」 ぶるり、と体を震わせる。何だか寒い。 むくりと体を起こし、寒さの正体を探すと、窓が開いているのが目に入った。こんなことで風邪を引くのも馬鹿らしい。欠伸をしながら窓に近づいたけど、 その時点で違和感に気づけばよかった。 背後に気配を感じた瞬間、俺は何者かに後ろから口元を押さえられ、さらに床に押し付けられた。 「……な、なん…っ」 「声を出さないでくれ。暴れるのもなしだ」 体を捩ってもビクともしない。体格差があるらしい。きっと暴れても勝てないだろう。 反抗する意思はないという意味で、動きを止める。すると、相手は「それでいい」と少し安堵したような声音に変わった。 「手荒なことをしてごめんな。お前の主人にバレたら面倒だから…あと、お前に危害を与えるつもりはないんだ、ニィノ」 「…?」 何で、俺の名前知ってるんだ? 相手はそっと俺の口元から手を外した。 力も緩んだので、おそるおそる視線を向けると、月明かりに照らされた水色の髪が目に入った。その顔に見覚えがあり、あっ、と声をあげる。 「テオ?!」 「ああ。良かった、覚えていてくれたんだな」 「そりゃ、忘れるわけないけど…テオ…どうしてここに?」 「お前を助けに」 「助け…?」 きょとん、とした顔で問い返すと、テオは俺を起き上がらせ、ぎゅうっと抱きしめてきた。何が何だか分からない。 そもそもテオは、俺が売られていた店の従業員の一人だった奴だ。年が近いのもあって、結構よく話してた気がする。俺の怪我の治療とかもしてくれたっけ…とりあえず、いい奴だということは知ってる。 「ごめんな…本当は、俺がニィノのこと、あんな店から連れ出してやりたかったんだ。そのために店の主人に何度も交渉して…それで、もうすぐ手はずが整うって時に、法外な値段で、酷い噂のある奴に買われて」 「ちょ、ちょっと待て。落ち着けテオ。何か、変だぞ?」 「大丈夫…大丈夫だ。俺が助けてやる。こんなところ、早く立ち去らないと…」 「テオ!」 話が通じないのが、何だか怖い。 店にいた頃から、思い込んだら一直線な奴だったけど、こんな風に暗い表情のテオは初めて見た。 「大丈夫だ。頼りなく見えるかもしれないけど、俺はお前のこと、ちゃんと守るから」 「テ、…っんむ?!」 テオの緑色の瞳が目前にある。 あと、柔らかいものが口に押し付けられてる。 何、何だ、俺は何をされてる? 押し退けようとするけど、力が入らない。 「テオ…、っ、なに、」 「眠ってくれ、ニィノ」 「っ、あ、んむ…っ、あ、ぅ…」 言葉を発した隙間に、舌が差し込まれる。上顎を舐められ、柔く唇を食まれる。ゾワッとした悪寒を感じているのに、はね除けられない。嫌なのに。嫌でたまらないのに、何で。 それに、とても眠く… 「奥方様?!」 「…チッ」 まぶたが重くなって、視界がぼやけ、閉じきってしまう前に、誰かが部屋に入ってきて、それで、 俺の意識は、闇に沈んでいった。

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