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33、呪いを解くには(フィリオ視点)
「おい、そろそろ行くぞ。ハイレン、案内しろ」
『ええ、分かったわ。ついてきて』
白い小鳥が宙を舞い、建物へと向かっていく。
取り戻す算段はついている。どこの馬の骨とも分からない輩にニィノを渡してたまるか。
そもそも…
ニィノを売っていた店は俺が買い上げて、全く別の店にした。ニィノに近寄らせないための措置だが、俺にも金が入るようになった上、売られていた奴らは解放され、一部は俺に恩義を感じているようで、城下の様々な情報源として雇うことになった。
…まぁ、そんなことはどうでもいい。
今、俺が成すべきことは1つ。
ニィノを取り戻し、守ることだ。
表はジルとエイミで充分だろう。
あいつらは強い。エイミが暴走しないか少々心配だが、ジルが何とかするはずだ。
裏口の扉の鍵を炎で溶かし、強引に中に侵入する。結界を張っていたようだが、どうやら強度はそんなに強くないようだ。たんに見つけにくくするための妨害程度だったんだろう。
「ハイレン、イルはどこだ」
『その扉の奥の部屋に放置されてるみたい』
ハイレンが扉の前に降り立つ。
そこを蹴破ると、縄でぐるぐる巻きにされているイルを発見した。
「旦那様!」
「無事か」
「あ、はい。大丈夫です!でも蹴破ったのはビックリしました!見つかりますよ!!」
「ふん…見つかったところで大したことはない。それに奴らは裏など気にする余裕がないから問題ない。正面で派手に暴れてもらってるからな」
「まさか姉さんが」
「お前を取り戻すために必死だ」
「…っ、旦那様、俺も一緒に奥方様のところに行きます!」
「走れるか」
「頑張ります!」
縄をほどいてやると、ハイレンがイルの周りをくるくる回った。そしてイルの肩に止まり、こちらを見る。
「行くぞ」
そして走り、走って…
ニィノがいる部屋へとたどり着いた。
誓約の印を結んでいるため、場所は手に取るように分かる。扉には頑丈な鍵がかかっていたが、そんなもの俺の炎の前では関係ない。
早々にもろくして、蹴破る。
「ニィノ!」
「…」
部屋のベッドで、俺の愛しいニィノが固くまぶたを閉じていた。近づき、揺すったが目を覚まさない。
「あっ、きっと魔法で眠らされているんです…!待ってください、僕の"治癒"の魔法で解けるかもしれな、………ええっ?!」
イルは俺がしたことに大層驚いていた。
何だ、本ぐらい読むといい。
「…ん、…んん…?ぷ、は…、え、フィリ、オ…?なに、近い …」
眠り姫は、王子のキスで目覚めるんだろう?
「早く起きろ。俺がせっかく口付けてやったんだからな」
「くち、づ…、…?!え、な、ななな」
「今さら赤くなるのか」
「な、なん、なんで」
「話はあとだ」
まぁ、実際の種明かしはあとでもいい。
まずはここから逃げることが先決だ。
ニィノを横抱きにし、立ち上がる。
「うわぁ?!」
「走るぞ」
「え、えっ、ちょっ」
まだ事態が飲み込めないニィノと、「良かったですぅぅ…奥方様ぁぁあ…」と泣きじゃくるイルを連れて、俺は走り始めた。
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