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38、幸せに浸る※

連れてこられたのは、風呂場だった。 俺が初めて来たとき、一番最初に通された場所。イルに洗ってもらったなぁ…としみじみ思っていると、ゆっくり床に降ろされた。 「風呂…って、うわ?!」 「もたもたするな」 あっけなく裸にされ、お互い生まれたままの姿になる。そのまま手を引かれ、中の椅子に座らされ、バシャ、と勢いよく湯がかけられる。 「な、なに、なんだよ?!」 「大人しくしていろ」 そしてまるで洗濯物のようにわしゃわしゃと洗われる。雑なようでいて、わりと繊細な洗い方で、髪を洗われるのは結構気持ちよかった。 「先に湯船に浸かっていろ」 満足したのか、俺を解放したフィリオは今度は自分の体を洗い始めた。 「何がしたいんだ…」 やたらに広い湯船に足をつけ、そろりそろりと入って肩まで浸かる。ちょうどいい温度で気持ちいい。 フィリオの方を見ると、湯気に隠れても分かる立派な体躯が見えてドキッとした。髪から落ちる水滴も、なんだか艶っぽくてカッコいい。水も滴るいい男…なんて言葉がよく似合うと思う。 一通り洗い終えたのか、フィリオがこちらに振り向く。あ、目が合っちゃった。 「なんだ、見惚れたか?」 にやりと笑われて、そんな顔もカッコいい…と思ってしまうのがほんと、どうしようもないと思う。しかも実際その通りだから何も言い返せないし。悔しい。 つかつかと歩いて、湯船に豪快に入る。 色々と目に毒だからやばい。 距離をとろうと、そうっと離れようとしたら、がしり、と腕を掴まれてしまった。 「もっとこっちに来い」 「わ」 引き寄せられ、体が密着する。 し、心臓が…飛び出そう… 緊張してガチガチになってる俺を余所に、フィリオは余裕な感じだ。 「何をそんなに固くなっているんだ」 可笑しそうに笑われ、ちゅ、と額に口付けられる。そしてまぶた、鼻筋、頬、喉元…と、まるで確かめるように、あらゆる部分に口付けられていく。 「お前は俺のものだという証拠を、もっとつけておかないとな」 「っ、あ…」 首筋をきつく吸い上げられ、自然と声が出てしまう。何度も何度も、場所を変えて痕を残される。心も体もがんじがらめに絡めとられて、 身動きがとれなくなって…それで、溺れていってしまう。 「フィリオ…、も、いいから…」 俺としては「もう風呂から出よう」という意味で言ったんだけど、フィリオは何を思ったのか、俺の足を抱え、自分をまたぐように抱え直した。 「…特に他の男の痕跡はないな…」 「…?何?」 「いいや。…こっちはどうだ?」 「っ!ひ、ぁ…っ?!そこ、いじったら…!」 「いつも触れているだろう?」 そして後孔に指をつぷりと差し込み、ゆっくりと中に押し進めていく。そしてまた、ゆっくり外に出す。それが繰り返されて、もどかしい気分になってくる。流されちゃダメだって思いながらも、大好きな人に触れられる喜びで体が震えてしまう。 「ふ…腰が揺れてるな」 「だ、だって、フィリオが変な触り方する、から」 「変?ああ…そうか、お前は激しい方が好きだからな」 「そっ、そんなことないから…!」 「今はこれで我慢しろ。でもそうだな…手を貸せ」 「手?」 両手を見せると、ひとまとめにされて下腹部に導かれる。そこには、俺とフィリオの屹立したものがあって、一緒に握らされる。 「っ?!な、なん」 「好きなように擦ってみろ」 好きなように…って言われても。 おそるおそる上下に動かすと、さらに硬度が増した。いつもこれが中に入ってるんだよな、なんて考えてしまい、意図せず後ろを食いしめてしまった。 「は、…興奮してるのか?」 「そっ、れは…フィリオも、だろ」 「違いない。お前とこうして触れ合う時間は好きだからな」 「す…」 まただ。またそういうことを言う。 この前までそんなこと言われたことない。 心臓がもたないからやめてほしい。 「集中しろ」 ぐり、と中を抉るように動かされ、体が跳ねる。俺も負けじと昂りを擦るスピードを速め、親指で先端も刺激する。 腰が揺れて、前も後ろもいっぱいいっぱいで、息が上がってくる。 ふと顔を上げると、息を乱して赤く色づく表情で俺を見るフィリオと目が合う。そして、どちらともなく顔を寄せ、唇を重ねる。 舌を絡め、くらくらしながらその気持ちよさを堪能する。 「ぁ、っふ…フィリオ、んん、ひぁあ…っ、や、だめ、も…っ」 「ああ、そうだな、俺も…っ」 「あ、あぁ…っ、ひぁあ!」 そのまま二人で高みを目指し、強く抱き合う。 我慢できなくなって、頭が真っ白になって…いつの間にか吐精していた。 くたり、と体を弛緩させ、フィリオにもたれかかる。フィリオは俺を撫でながら、そっと耳元に唇を寄せ、口付けた。 「…続きは、ベッドでな」 吹き込まれるように囁かれた言葉で、俺の体は期待するように、ぞくりと愉悦を感じた。

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