2 / 43

2、プロローグ② ※

早く終わらないだろうかと、今にも擦りきれて壊れそうな頭でぼんやり考えていると、突然扉が開いた。 「……おい、貴様ら」 「ああー? なんだてめぇ、こいつは今俺たちが味見してんだよ。順番待ってろや」 「……」 下卑た笑いを浮かべる男たちへと、カツカツと高らかに靴を鳴らしながら近づいてきたのは、長身の男性だった。逆行で容姿はよく分からない。次はこの人の相手をするのか…と気が滅入る。 「がっ……!」 突然、俺をなぶっていた男が一人蹴り飛ばされた。呆気にとられて見ていると、さらにもう一人蹴りあげられた。 すると、今度は別の声が扉の奥から聞こえてきた。あれは、主人か。 「だ、旦那~!やめてくださいよ!お客さんに手を出さんでください!」 「黙れ。俺を誰だと思っている。なぜこいつらに指図されねばならんのだ」 「いやいやそう言われましても…」 「おいこら!こいつは何なんだ!」 俺の咥内を穿っていた人物が立ち上がり、青年に殴りかかる。しかし青年は少しずれただけで避け、あまつさえ足をかけて転ばせた。 さらに、転んだ男の頭を踏みつけ、蔑んだ目を向ける。 「学の無い貴様に教えてやろう。俺はヴィーデナー家の当主だ。ここ一帯を取り仕切る頭くらい、顔を覚えておけ。愚か者」 「ちょ、旦那、それくらいに……」 「いくらだ」 「は?」 「こいつはいくらで買われることになっていた」 「あ、ああ、そいつですか?ええと、」 「まぁいい。その3倍出してやろう。こいつは買い上げる」 「お、お買い上げなさるんで?!」 主人の言葉を無視し、男は俺のそばへと歩み寄る。そして、壁際に追いやられる。 …何、この状況…。 「お前の名前は」 「……」 驚き、硬直する俺の顔の横を、拳が通りすぎた。壁が抉れるのではないのかというほどの、大きな音がした。 「俺の言葉には、3秒以内で答えろ」 「……っ」 「もう一度だけ聞いてやろう。お前の名前は」 「…っ、に、ニィノ……」 「そう、それでいい」 男はにやりと微笑むと、俺を壁に押し付けてきた。息が無理矢理押し出された。苦しい。 「お前は今日から俺の所有物だ」 これは、俺と彼の、歪んだ関係のお話。

ともだちにシェアしよう!