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6、屋敷の住人たち
「屋敷の敷地内ならば自由に動いて構わない」
フィリオはそう言うと、俺に鍵の束を投げて寄越した。慌ててそれを受けとり顔を上げると、もうそこにフィリオの姿はなかった。
「…俺に鍵預けていいのかよ」
これを使って逃げるとは考えないんだろうか。
それとも、もしかしてこの鍵に逃げられないような仕掛けでもしてあるんだろうか。
色々な角度から見てみるが、外装は至って普通の、シンプルな鍵だ。
「…暇だし、探索してみるか」
着ている服が女物なのが気がかりというか恥ずかしいというか…本当は出たくないけど、特にやることもないから、俺は部屋の外に出てみることにした。
恐る恐る扉から顔を出す。
目にはいるのは、赤絨毯が続く長い廊下。高そうな絵に花瓶、豪華な花。キラキラしていて目に痛い。
「…金持ちなんだな、あの人」
俺をかなりの値段で買ったみたいだから、それなりの金持ちだとは思ってたけど。
「あのぅ」
「ひゃ?!」
廊下をじっと見つめていたら、後ろから声をかけられた。ばっ、と振り向くと、メイド服姿の女の子と…昨日俺を湯船で洗ってくれた少年がいた。
「あ!申し訳ありません、驚かせてしまいましたか」
「ご、ごめんなさい! 何かお困りかと思ったんです!!」
「いや、その、大丈夫…ええと、?」
困ったように言葉を詰まらせると、女の子がにっこりと微笑みながら「エイミと申します」と名乗ってくれた。
「エイミさん…」
「まぁ!どうか呼び捨てなさってください。私たちは使用人ですから」
「え、いや、そういうわけには」
「ニィノ様は私たちにも分け隔てなく接してくださるのですね。嬉しいです。でも、どうか呼び捨てに」
分け隔てなくっていうか…むしろ俺は使用人よりも地位は低いし。金で買われたペットか人形みたいなもの。人扱いしてもらえない存在。
あ、俺はこの人たちの下、雑用したりするのかも。とりあえず優しそうでよかった。
「そ、そうですよ!僕たちに敬称をつけるなんて、旦那様に叱られますよ!」
「そ、そうなの?それもそれでどうなんだろう…」
「旦那様は怖いんですよー!」
「こら、イル。奥方様にそんなことを言うもんじゃないわ」
「でも…!」
ん…?
奥方様?
「奥方様、って…?」
「まだ実感がございませんか? でも大丈夫です、あの頑固…こほん、少々厳しいところがある旦那様がお選びになったんです。自信をお持ちになってください」
にこにこと微笑むエイミが言った言葉を反芻する。奥方様。妻。フィリオが選んだ。話の内容からして、それは、俺。
「ええええええ?!妻?!俺がフィリオの?!」
「…? はい、もちろんです。旦那様がお連れになって、ニィノ様を妻になさると仰っていました」
どういうことだ。
どういうことだ?!
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