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第2話

あれから数日が経った。俺はいつも通り仕事をしているとふと声がかかる。 「立花さん、ですよね」 「あ?そうだけど?」 「あの、相談に乗って欲しいことがあって、その、今日の夕方、話聞いて貰えませんか?」 「……別にいいけど」 「ありがとうございます!」 同じ部署の後輩だった。話したことはなかったが噂には聞いていたやつだった。と言っても悪い方の噂だが。仕事を終えたあと指定された場所に向かう。人気の無い路地、どう見ても怪しさマックスだ。 「すみません、こんなとこまで付き合わせて」 「……で、相談って?」 あえて、何も気づいてないフリをして聞く。するとガラリと雰囲気を変えた後輩、楠野はニヤリと笑う。 「お前、あの須藤と仲良いんだってな?」 「……は?」 何かと思えば須藤の話。意外な方向の問だった為思わず聞き返す。 「あいつ、昔何やってたか、あんた知ってんの?」 その言葉を聞きながら俺は煙草をつけると煙を吐きながら答える。 「……さぁ?知らねぇな。それが相談か?」 楠野が笑う。それを合図に周りをガラの悪い奴らに囲まれる。はぁ、まじか。完全に詰んだ。 「あいつ、昔俺らの仲間を半殺しにしたんだよ。俺も含め、な」 「……へぇ。そりゃ災難だったな」 逃げようと視線で探るが逃げる隙もない。さらに腕を掴まれる。 「チッ」 男が俺を殴ろうと手を振り上げる。その瞬間、その男は吹っ飛んだ。ーーーバキィッ!と鈍い音がした。そして俺の視線の先には、須藤がコートを片手で払うように立っていた。どうやら須藤が男を蹴り飛ばしたらしい。その表情は、いつもの柔らかさは消え、無言だった。 「……こいつに手ぇだすな」 と低い声で脅す。その姿に周囲は「須藤?!」とざわつく。 「須藤、」 「やめとけ。今ならまだ、骨折だけで済む」 静かに告げる。次の瞬間、圧倒的なスピードで周りの男たちを蹴り飛ばしていく。次々と倒れていく男たち。俺はそれを煙草を片手に呆然と眺める。何かあると思ったが、まさかここまでとは。そう思った時には既に、須藤と俺以外立っていなかった。 「……大丈夫ですか?」 あれほど動き回ったというのに息一つ乱れていない須藤は心配そうにこちらに声をかけてくる。 「……まじで何もんだよ。お前」 その問いに須藤は少し笑って答える。 「昔、ちょっとやんちゃしてて」 「……昔、ってレベルか?これ」 やばすぎだろ、これ。と呟きつつ辺りを見回す。 「……巻き込んで、すみません」 深々と謝られる。 「別に、お前のせいじゃねぇよ。ここに来たのは俺だし」 会社員である須藤、そして先程の蹴りを食らわす須藤。そのギャップに、なんでこいつ、会社員なんかやってんだ。と強烈に興味が湧いた。結局、その日は念の為、と言われて駅まで送られ解散した。その日を境に、俺は暇を見つけると絡みに行き、理由をつけては昼休憩に連れ出していた。初め、須藤は距離を取ろうと断ったりしたが、しつこく誘うと笑って着いてくるようになった。 「あの、なんであれを見たあとに普通に接するです?」 不意に問いかけてくる須藤に俺は笑いながら答える。 「おもしれぇから。お前。もっと見たくなった。出来れば近くで」 「!そ、うですか。」 そう言った須藤は、どこか嬉しそうで、驚きの中に安堵が混ざっていた。

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