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第4話
スタートした同棲。役割は自然と、須藤が家事全般、俺が掃除になった。須藤曰く、「お前、家事とか苦手だろ、俺がやっから掃除任せた」との事だ。俺はベランダで煙草を吸いながら料理する後ろ姿を眺める。
「……なんつーか、馴染んでんなぁあいつ」
すると須藤はサラダと味噌汁、唐揚げとご飯をよそって机の上に置いた。
「おら、できた。食え」
「ん。にしても、上手だな、お前」
「伊達にひとり暮ししてねぇよ」
「確かに」
口に料理を運ぶと美味さが広がる。
「クソうめぇ」
「良かった」
ちなみに、あれ以来須藤は俺の前では素で話すようになった。その小さな変化に、俺は嬉しく感じている。
「あ、そうだ。これ」
そう言って俺は箱を取り出すとそれを須藤に渡す。
「?なにこれ」
「見りゃわかる」
首を傾げながら箱を開け、固まる須藤。
「…………おい、これ、裏に名前……これ、ペアリングってやつだろ……」
驚いた顔で俺の方を向く。その顔には照れも混じっていた。
「うるせぇ、さっさとつけろ」
「…………はぁ、ほんと、お前ずるいわぁ。なんか、お前の前だと気が緩む」
「いいだろ、別に。何も問題ねぇ」
「っ、そうかよ」
照れながらそっぽをむく須藤に笑みがこぼれる。須藤の顎を掴むと軽くキスをする。照れたように驚く須藤に俺は笑いながら頭を撫でる。
「うわぁ、イケメンかよ。まじですきだわ」
「そりゃ俺もだわ」
「あのさ、立花、その、薫って呼んじゃダメか?」
「いいぜ。なら俺はお前のこと涼真って呼ぶわ」
「っ、おう。あんがとな、薫」
「ふっ、可愛いなぁ涼真は」
「っるせ」
優雅に流れる時間の中。2人の幸せそうな笑い声が響き渡る。空は満月で、まるで2人を祝福するように輝いていた。
夜。二人の部屋にて。テーブルには飲みかけのコーヒー、灰皿には薫のタバコ。ソファで、薫が涼真を腕で囲い込むように座っていた。涼真は薫の肩にもたれ、少しだけ目を閉じる。指先で、胸元に下がるシルバーのペンダントをなぞりながら。それは薫が渡したペアのリング。裏には、二人の名前が刻まれている。
「……まだ信じられないな」
「何が」
「俺がこうして、お前に抱きついてること」
薫はタバコをくわえたまま、横目で見下ろす。
「は?何だそれ。バカか」
「……うるさいな」
涼真は、苦笑しながらも薫の胸に頬を押しつけた。薫はため息をひとつ落とし、タバコを灰皿に押し付けると、
空いた手で涼真の髪を乱暴に撫でる。
「……ほんと、お前ってさ」
「ん?」
「俺を甘やかすの、やけにうまいよな」
「そうか?普通だろ。それにお前が甘えてくんじゃねぇか」
「甘えてるっていうか……こうしてると、落ち着くんだよ」
「ふーん」
薫はにやりと笑い、涼真の耳元に顔を寄せる。
「じゃあ、ずっとこうしとけよ」
「……っ、そういうことサラッと言うなよ」
「別にサラッとじゃねぇよ。本気」
「……もう、ほんと……お前ってズルい」
涼真は笑って、薫の服をぎゅっと握りしめた。数秒の沈黙のあと、薫が口を開く。
「なぁ、涼真」
「ん」
「……幸せか?」
涼真は少しだけ目を細め、指先でペンダントを触りながら答える。
「……バカみたいに、幸せ」
「そうか」
「お前は?」
「俺?」
薫は涼真を見下ろして、低く笑った。
「お前といる時間以外、全部クソだな」
「……はぁ?それ、褒めてんの?」
「褒めてる。……お前といる時だけ、世界がマシになる」
「……ほんと、ズレてんなお前」
「うるせぇ。文句あるか」
「ない」
涼真は吹き出して、薫の首に腕を回した。そして小さく囁く。
「……俺、もうお前なしじゃダメだわ」
薫はその言葉に一瞬黙って、ゆるく笑った。
「上等」
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