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『エピソード 1』ー2

「え! なんで!? ななちゃんも全然樹に会ってないんでしょ?」 「――いっくんに……俺に会いにくるなよって、ラインで」  七星の目元が潤む。 (言葉にしたら、哀しくなってきちゃった)  こんなことで泣くわけにはいかず、ぐっと堪える。  大地と明は顔を見合わせた。 「気にすんなよー」 「樹だって本当は会いたいに決まってるよぉ」 「そんなことっ」  言葉を詰まらせる。 「大丈夫大丈夫」  二人は両側から七星の肩をぽんぽんと叩くと、目的地に向かって歩き出した。当の七星のほうは彼らのあとについて階段を(のぼ)ってはいるものの足取りは重く、しょんぼりと顔も俯き加減になっていく。  階段を上り切り、二階に辿り着く。そこで、ふと気づく。 (あれ? 大くんとメイさんが……)  目の前でざわざわしている人の群れの中に、大地と明がいない。 (え?? こんなとこではぐれる?)  きょろきょろしても背の高いオレンジ色の髪が見えない。 (いっくんの教室に行っちゃったのかなー)  やや足を早め、樹のクラスへ。昨年は自分の教室だった――場所が変わっていなければ。  お化け屋敷的なところは文化祭では人気だ。教室近くまで来ると、順番を待つ人の長い列が見えた。その列を後ろから前へと確認していく。 (いないじゃーん)  七星は心の中で叫んだ。 (そうだ、電話で)  急いでスマホを開く。通話ボタンを押そうとして、はたっと気づく。 (でも、せっかく二人きりになったんだから……二人にしてあげたほうが……)  陸上のスポーツ推薦で入った大地は、いつも練習で忙しいらしい。そんな彼が今日は一緒に来ている。休みを取ったのか、たまたま休みだったのか、それはわからないが。もしかしたら久しぶりに大学外で会ったのかもしれない。そう思うと二人の邪魔はできないような気がした。 (……僕、どうしようかな……) 『会いに来るな』と言われたけれど。 (もしかしたら今はいない時間かも知れないし、お化けやってるとも限らないし……並んじゃう?)  自問自答の末お化け屋敷に入る列の最後尾につくことにした。 (お化け屋敷かぁ……入ったことはないけど……)  ぼんやりと前の人の後頭部を見ながら、少しずつ進んでいく。  ふいに、とんとんと肩を叩かれ、 「ひぇ〜――んぐっ」  変な声が出そうになったところを口を塞がれた。 (えっなにっなにっなにっおばけ? おばけっおばけっ)  これから入るところが『お化け屋敷』なだけに、七星はパニックに陥った。自分の口を押さえているものを外そうとじたばたする。 「ナ・ナ」 「…………」

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