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『エピソード 1』ー4

「今日、カナたちと一緒だって言ってなかったか?」 「うん……そうだけど……」  何か物言いたげにちらちらと樹の顔を見る。 「はぐれちゃって」 「やっぱ迷子か。自分の通ってた学校で」 「あ、でも。ほら、今日はたくさん人いるし」  なんだか不機嫌そうな顔をしている。 (やっぱり、来たこと怒ってるのかなぁ) 「あ、あのね、いっくん。僕はいっくんが会いに来るなって言うから……来るつもりなかったんだけど」  慌ててそう言ったけど。 (いいわけに聞こえるかな)  樹の顔が直視できない。 「メイさんが……。大くんもなんかめっちゃノリ気で」 「どうせ揶揄ってやろうとでも思ったんだろ」  ちっと舌打ちをする。びくびくっと七星が身体を震わせた。 「――正解です――でも気がついたらいなくなってて――先にいっくんのクラスに行ったのかと思ったけど。いないし」 「さっき連絡しようと思ったんじゃないのか? なんでしなかったんだ?」 「大くん練習で忙しいらしいし、二人で会うの久しぶりなんじゃないかと思って……」  そこまで言って、あれ? っと気づく。 「なんで知ってるの?」 「……後ろから見てた。あーたまたま見かけただけだ、話しかけるつもりはなかった」  本当は会いたかったなどとは言えない。苦しい言い訳だ。  そんな裏の気持ちには気づかず、すべて素直に受け取ってしまう。 (話しかけるつもりなかったって……)  ちくん……と胸が痛む。  七星の表情の変化に。 (やべっ泣かす)  慌てて気を逸らそうとした。 「で、ナナはここに入るのか?」 「あ、うん、ごめんね。いっくんいないかもしれないし、入るくらいいいかなーなんて」 「けど、ナナ……お化け屋敷は苦手じゃ……」 「え? 僕お化け屋敷なんて入ったことないよ」 (ん?)  樹は昔のことを思い返していた。  彼らが普段使っている駅の周辺では、毎年七月の前半に三日間かけて大掛かりな祭りが催される。道路沿いは様々に飾りつけられ、露店が建ち並ぶ。普段は何なのか思い浮かばない店舗と店舗の間に、その時だけお化け屋敷が建っていたりもする。  天野家の人々と樹がそこに入ったのは小学校一年か二年の時。樹も七星も初めての体験だった。  中に入ると真っ暗で、所々にぼんやりとした灯りに照らされて、墓だの井戸だのが浮かび上がる。 (正直、俺もあの時は怖かった……)

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