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第3話 会長と副会長のその後3

 Ωのフェロモンは、特定のαと番契約を結ぶまで誰彼構わず誘惑する。会長だってそれに当てられたはずなのだ。  大体、街中で転入生を助けたという話だって普通に考えればおかしいところはある。  もしヒートを引き起こしたΩがいたら、避難を余儀なくされるのはΩだけでなく、Ωのヒートに反応してラットを引き起こす可能性があるαも一緒だ。それなのにその場でΩを守り続けて、介抱までしたなんて――なぜそんなことが可能だったのかはわからないが、あの人は鉄人かなんかなのだろうか。  多少の疑問は残るが、学園内では転入生発信のその噂によって、副会長は本来庇護すべきΩを襲うような下劣なα――悪者に。街中だけでなく学園内でもΩのヒートに流されることなく転入生を助けた会長は、まさしくヒーローに。  生徒たちの間で、会長と副会長の立場の認識は、正反対になった。  副会長の処罰は、Ωを襲うなんて蛮行に手を染めたにも関わらず、一週間の謹慎処分だけだった。  家柄がモノを言うこの学園で、副会長の家の力は強い。謹慎処分というのもΩ側への配慮をした体裁を取り繕っただけのものでしかないのだろう。  処分が下るだけまだ人の心がある、ともいえる。  生徒会室にて、会長が呟く。 「ちっと目ぇ離しすぎたな」  何のことを言っているのか、俺達生徒会のメンツは一瞬で理解した。  きっと副会長のことだ。 「会長は、凄いですね。ヒート中のΩを助けるなんて。俺だったらヒートのΩにはまだ怖くて近寄れませんよ。俺も会長みたいなαになりたいな」 「会長くらい完璧なαじゃないと、こんなことできませんよ」  まだ1年の庶務と広報がそう言って会長を称えた。 「俺は俺のもんを取り戻しに行っただけだ」  会長は何ともないことのように言う。 「でも、俺は副会長の気持ちがわかるけど」  そんな中で異を唱える者、一名。  会長と副会長、そして会計の俺と同じ2年の書記。観音寺(かんのんじ) 恭弥(きょうや)。 「自分のΩ相手なら、犯してでも無理矢理手に入れたい。俺はな。それはαとしての本能だ。ましてや、あの転入生、副会長の運命なんだろ。我慢なんてできるはずがない。俺達αなら副会長の気持ちだってちょっとはわかるだろ」  そう言った観音寺に、庶務と広報は焦ったように観音寺をなだめる。 「ちょ、ちょっと……先輩。Ωは俺達αが守るべきもので、犯してでも……なんて、他では絶対言っちゃ駄目ですよ」 「そうですよ。会長みたいなΩに対して真摯なαこそが真のαです。ねっ、会長。……でも本当、凄いですよね。例の転入生、副会長に誘発されてヒートだったのに。会長は副会長と付き合ってるとはいえ、ヒート中のΩ相手によく手え出したくなりませんでしたね」 「俺はお前らとは違うからな」  会長は何か含みを持ってそう答えた。これ以上は何も言う気が無いようで、話は打ち切りに。俺達は各々の仕事に戻っていった。

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