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第4話 書記×会計

「――って言ってたじゃんお前。自分のΩと番になるためには何でもするってさ。俺はαの男なんだけど」  放課後、生徒会の仕事を片した後に観音寺の部屋に無理矢理連れ込まれた俺は、同じαで、同じ男であるはずの観音寺に迫られていた。  迫られるとはどういうことか。文字通りだ。  副会長のことを擁護するようなことを言っていた観音寺だが、今日は寮へ帰るタイミングが俺と重なった。  そこまでは良い。  うちの学園の寮は一人一部屋を与えられている。  それぞれの部屋に帰るならばエレベーターの階も違うし、そこで別れるはずだったのだ。  それが今日はなぜかエレベーターのボタンを押そうとした俺を観音寺は阻止し、自分の部屋の階に着いたら俺を引っ張って部屋へと無理やり連れ込んだ。  そしてこうのたまったのである。 「真城。お前は俺のΩだ」  何を言っているのだろうか、こいつは。 「お前が俺の運命だ」 「頭イカレたんかテメー」  俺は壁に俺を押し付けて壁ドンをかますその横っ面を思い切り殴った。 「いってえ!!」 「アホか。俺はαの男だろ。お前の運命の番はΩだし、俺はお前のもんでもない」  頭がおかしくなったとしか思えない観音寺の言動に俺は気が動転していたが、一応腹いせに殴りはしたし、もういいかと部屋を出るために玄関に向かう。  が、観音寺は俺を離さなかった。 「……はなせよ」 「はなさねー」 「……一体何がしたいわけ?お前」  俺は不愉快な心境を隠さずにそのままに表に出すと、観音寺に聞いた。 「……俺はお前のことが好きだ、真城」  俺を捕まえたまま、観音寺がそう、そっと口にした。  俺は数秒、何の反応もできなかった。  αの男がαの男を好きになる。そんなことが果たしてあり得るだろうか。  いや、会長と副会長という前例はある。しかし転入生が来たことで……というより運命のΩが現れたことであの二人は今大変なことになっている。  αの男同士。  意味も無ければαとΩの間にある強い結びつきも無い。  目の前の男が、なぜ俺に向かってそんなことを言うのか、得体が知れなかった。 「……会長がαの男を好きになったから、まさか真似してる?」  俺は可能性としてあげられる疑問を口にした。  この学園の生徒会は、学園内で最も強いαの、男だけが所属できる。  俺達の代は――今の3年を押しのけて、2年で会長、副会長、会計、書記の座を埋め尽くしていた。  今の3年が弱かったのではない。俺達が強すぎたのだ。  そんな中でもひと際αとして完璧と謳われているのが、会長だ。成績上位。家柄上位。Sクラスから優秀な生徒順にクラスが決定するこの学園で、会長は常にSクラスだった。  そんな会長が、αの男……副会長と付き合った。  会長に憧れる男はなにも一般生徒や生徒会1年だけではない。  目の前のこいつだって、会長に触発されて頭がおかしくなったのかもしれなかった。 「違う。俺は……中学の頃からお前のことを見てた」 「はっ?」  しかし観音寺は俺の予想を裏切って、俺に告白した。 「お前は昔から目立ってたからな……。クラスが違っても、いつでも目についたよ」  俺のクラスはAクラスだ。  生徒会のくせにSクラスじゃないのかよと突っ込まれそうなものだが、俺は成績、悪し。家柄、良し。αとして、強し。素行、悪し。Ωや女の子たちと幾度となく関係を持つ下半身の緩さで頻繁に生徒指導室のお世話になっていた。家柄と持ち前のα性の強さだけでAクラスに所属していた。  会長も副会長も観音寺も、Sクラスだ。  クラスが違うというのに、こいつは俺のことを昔から見ていたという。  ストーカーのような気持ち悪さを感じながらも俺は一応、今の心境を述べておく。 「……キモいんですけど。俺、Ωと女の子にしか興味ないし。お前のもんだとか言われても、意味わかんないんだけど」 「……わからせようか?」 「は?」  観音寺は俺を引き留めていた腕をグッと引くと、バランスを崩した俺を床に引き倒して上にのしかかった。  床に打ち付けた後頭部も背中も痛い。

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