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第6話
会長を見習ってΩは俺達αが守るべき存在だなんて口にしていたのが、馬鹿みたいだった。
もし俺自身がΩに変えられてしまう可能性を俺は一瞬考えて、Ωなんかに堕ちたくはない。
そんな考えで頭がいっぱいになってしまったのだ。
α性の強いαとして、今までのらりくらりと適当な生活をしてきたが、それでもαたる所以か、周りは俺を認めていた。
αの世界はマウンティングだ。
相手は自分より上か、下か。自分より強いαの下につくかどうか。群れを統率するαと、その下につく者同士の小競り合い。そんな派閥争いまである。
俺はそんなものには興味を抱かなかった。だからどこの派閥にも入らなかったし、誰かの下につくこともせず自由気ままに生きてきた。それでも俺が自由でいられたのは家柄が良く、αとして強かったからだ。マウンティングの世界から外れた場所で奔放に生活する俺に文句をいう奴なんて誰もいなかった。
それが、もしも、万が一にも、観音寺の言うようにΩに性転換なんてしてしまったら。
考えるだけでもぞっとする。
俺は今の地位を失うどころか、どこの派閥にも付かず、自由気ままに生きる俺のことを内心疎ましく思っていた連中からもどんな仕打ちを受けるかわからない。勿論、Ωの中でどのように生き抜いて行けばいいのかなんてこともわからない。
Ωは、αに庇護されるべき存在。
そんなのは体裁だけだ。
Ωになんて、なってたまるか。
俺は恐怖の中、今後のことを考えた。
もしもだとしても、観音寺に犯されるようなことがあれば一発アウトだ、多分。
俺はネットで、催涙スプレーとスタンガンを購入した。
速達でこれらの護身グッズが届くまで、生徒会室には近寄らなかった。
幸いにも観音寺都はクラスが違う。
気を付けていれば観音寺と接触せず――接触はしても二人きりにならないよう努めることはできた。
しかし観音寺は俺の目の前に現れた。
なんてことはない。寮の、俺の部屋の前で待ち伏せしていたのだ。
毎日部屋に帰る俺と確実にエンカウントするために。
「ッスゥーーーー間違えました」
俺はエレベーターから降りた瞬間見つけたヤツから逃げるようにもう一度エレベーターに戻ろうと閉じたドアの矢印ボタンを連打した。
まだどこにも行っていなかったエレベーターはすぐに開く。
しかしエレベーターに入って閉ボタンを連打している間に、走ってきた観音寺が無理矢理ドアをこじ開けた。
人感センサーが搭載されているこのエレベーターではドアに人が挟まれば自動でドアが開く仕様になっている。
俺はエレベーターという最悪な密室の中で、観音寺に捕まったのだった。
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