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第2話 掃き溜めに鶴
「おはようございます。
4月からこっちに来る社員の方が早めに今日から入ってくださってますから、皆さんよろしくお願いします。」
事務方の女子もざわついた。
来週の水曜日からなのに5日も早くお出ましだ。
本社の正社員様。俺は皮肉を込めて見た。
珍しく朝礼があった。
そこには、爽やか、がスーツを着て立っている。
誰もが好きになるタイプ。嫌味の無いイケメン。
それだけで俺は拒絶反応だ。
うちの会社は,田舎に巨大倉庫をいくつも構えているそこそこ知られた企業だ。就職はかなり狭き門だっただろう。
(ま、俺は世の中の流れとは関係ない。
俺の存在感なんてゼロだ。誰にも見えない透明人間みたいなもんだ。だったら,いっそ放っておいてもらいたい。)
今日はダラダラでなく珍しく朝礼で点呼があった。小学生のように「はいっ」と返事する。
若い奴はダラダラしているが年寄りは返事がデカい。返事だけで、動きはダラダラと変わらない。
爽やかな笑顔でその彼は挨拶した。
「本社二年目でこちらにお世話になります。
森野俊太郎です。24才、独身。
よろしくお願いします。」
他にも二人、自己紹介した。性格のキツそうな女性は加藤早紀、と小太りの男性は矢島智弘と言った。三人とも同期だという。
学生時代サークルとかでモテまくった陽キャの代表みたいな森野に、なぜか俺は腹が立った。
わかってる。嫉妬だ。俺より2コ上。社会経験も豊富だろう。俺は社会経験が無い。
次の日はまた、抜けるような青空だった。朝早く来て倉庫の周りを散歩した。敷地の周りにぐるりと桜が植えてある。歩いて桜を見て回った。
まだ、三分咲きか。それでも写メを撮って歩いた。
「おはよう!」
昨日のイケメン森野が声をかけて来た。
「早いね。車で通勤してるの?」
「はい。森野さんは?」
「僕は電車。でもこっちに越してこようかと、物件を探してるところ。」
「この町は面白く無いよ。」
「それでも海があるじゃないか。」
嬉しそうな顔をして言う森野の顔に見惚れてしまった。
「ここの桜も全部咲いたらすごく綺麗だよ。」
(引っ越して来ようか、と言うけど家族はいないのかな?恋人とか。)
俺のような飢えた独身男はすぐそんな事を考えてしまう。
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