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第6話 宮大工
「すげぇ、よくこんな古い物件見つけましたね。直すところもたくさんありそうだ。」
森野さんは古民家に惚れ込んでしまった。築百年以上経たないと古民家とは言わないらしい。
費用は何とかするから、と言っている。何とかって?
(こんなボロ家に金をかけてどうするんだろう。
俺には関係ないけどな。)
森野さんは仕事そっちのけで古民家に夢中になっている。
「すぐに、住める訳ではないらしい。」
「どうするんです?」
「先に一部だけ直して住みながら修理する方法があるって。」
実際に大工さんに見てもらって、住めそうな所から手を入れる、と言う事になった。
「大匠」という所に再生工事を頼んだ。
「大匠」は昔からの宮大工が集まってやっている会社らしい。森野さんの親が手配したそうだ。
息子の道楽を応援してくれる親がいるのはずいぶん甘いな、と思った。
これでもう俺は森野さんに興味が無くなった。
育ちの違う人種だ、とつまらない気持ちになった。
翌日、日曜日。ボロ民家を見回してとりあえず住める部分を物色した。
「厨に竈門があるよ。煮炊き出来そうだ。
畳の部屋もわりと綺麗だ。」
田の字型に4部屋が中心となって土間から続いている。その奥に座敷があって床の間に続く。
廊下が縁側になっている。
「なんか結構きれいだ。今日は大工さんが来てくれる。」
話をしていると、中庭にトラックが入って来た。
バタンバタンッ。男の人が3人降りて来た。
「こんにちは、大匠から来ました。」
屈強そうな男の人たちだ。
「あ、酒井。」
一人は俺の高校の同級生だった酒井だ。
「田神じゃねえか?
東大入ったんじゃなかったか?」
「いや、大学は行ってない。」
「あっ、そうか。」
あの頃、噂が広まっていたから、こいつも知っているんだろう。気まずい。
「こちら、先輩の小野田さんです。
それと、山口さん。二人ともベテランの宮大工です。古民家の専門家です。」
「はあ、施主の森野です。
よろしくお願いします。」
「ああ、お父さんから伺っています。
まず、家の診断をしましょう。」
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