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第10話 名前

「俊。」 小野田さんは森野さんをそう呼ぶ。 「俊って?」 「ああ、小野田さんは僕が子供の頃から俊って呼ぶんだよ。」 (子供の頃から知ってる人なんだ。) 俺は何だか寂しい気持ちになった。 「よおっ、どうした? 浮かない顔してるな。」  翌日、小野田さんが声をかけてくれた。 「森野さんの事、俊って呼ぶんですね。」 「ああ、昔から知ってるからね。小さい頃から。 みんな、名前で呼び合えばいいよ。」  名前を聞かれて 「甲斐です。田神甲斐。」 「じゃあ、今日からカイって呼ぶよ。」 「小野田さんはなんていう名前?」 「俺か?俺は崇だ。タカシって呼ぶかい?」 「いえ、そんな、崇さん,で。」 「ああ、山口は良和だ。ヨシって呼んでやってくれ。酒井はなんだっけ? え、賢太?じゃあケンタで。」  あっという間に呼び名が決まった。 何だかくすぐったい。森野さんに言ったら 「僕もシュンって呼んで。友達はみんなそう呼ぶから。」 小野田さんが 「甲斐っていうのはかっこいいな。 お父さんは山梨出身か?」 「いえ、祖父が山梨です。 なぜか父はここで生まれたそうです。俺と同じ。 崇さんは?」 「俺はこの近くだけどもう少し内陸だな。 仕事で日本中、行ったけど。」  倉庫でのピッキングの仕事の時も、古民家にいる崇さんのことが気になって仕方がない。倉庫なんか放り出して古民家の手伝いをしたい。 「本日は社長からお話があります。」  珍しくリモートで朝礼が行われた。 「皆さん、GAFAM(ガーファム)はご存知ですね。  アメリカのプラットフォーマー企業です。 グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、そしてマイクロソフトの頭文字です。  そして最近目が離せないのはBATH(バス) です。バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ。中国の企業です。  倉庫で扱う商品の量がものすごい勢いで増えて来ています。  我が社も独自のプラットフォーム事業に参入しようと考えています。  業務時間もシフトを組んで24時間稼働するようになりました。  ぜひみなさん、意識を高く持って仕事をしてください。」  リモートで社長の檄が飛んだ。ますます疲弊する労働者。

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