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第12話 地酒を飲む
シュンと距離が縮まった気がする。社長の息子だって? なんかムカつく。
「ねえ、プラットフォーム事業って、
おまえの親父、何考えてんの?」
「ああ、親父は乗せられてんだ。
意味もわかってないよ。
プラットフォームの意味も、ね。」
もともと運送屋だった。代々続く田舎の地主で広い土地に倉庫を何棟も建てた。
それが通販ブームに乗っかって、うまく行っている。情報弱者な、老害ジジィだ、とシュンは言う。
「僕は後を継いで事業をデカくするつもりはない。野心家の秘書が付いているんだよ。」
そんな事まで話してくれていいのか、と心配になる。
「シュンって彼女とかいないの?」
「ああ、めんどくさい。」
古民家を修復しながら、結構立ち入った話をするようになった。
もともとイケメンなシュンだが、この頃見慣れてきた、というか、最初の頃みたいに見惚れたりはしない。それより毎日通ってくる『大匠』の小野田さんが気になる。
今日は会社は休み。夕方になった。
「この家も大分きれいになったね。」
「カイ、今日、泊まって行く?」
「いや、帰るよ。」
「なんで?」
「別に、用ないでしょ。」
「飯、作ってよ。」
「シュンだけなら、コンビニでよくない?」
「よくないよ。僕、炊き立てのご飯が食べたい。」
「シュンは早く彼女とか作れよ。」
「飯のために彼女とか、問題発言だな。
モラハラか?」
シュンが悪巧みの顔をして
「小野田さんも誘ったら、泊まるか?」
「えっ?」
「僕と二人じゃいやなんだろ。
まだ裏で作業してたから、声かけるよ。」
結局、小野田さんとケンタが泊まることになった。今までだって何回も俺はこの家に泊まっている。何で今夜は気まずいんだろう。
竈門で羽釜を使って飯を炊く。このために本格的な羽釜を探した。田舎の金物屋でデッドストックがあった。重たくて分厚い木で出来た蓋が乗る。竈門の修理は、左官経験もある崇さんがやってくれた。
米はヨシさんの実家から分けてもらった。ヨシさんの家は山武の農家だ。お兄さんが農家の後を継いでいる。
車で出かけた小野田さんがイワシの一夜干しを持って来た。あと、梅干し。
「知り合いから分けてもらった。味醂干しもあるよ。梅干しも自家製だ。しょっぱいぞ。
甘口なんか作らないから。」
みんなで泊まることになり地酒を飲み始めた。
茶碗酒。地元の日本酒だ。
「みんな、すごく強いね。」
あっという間に一升瓶が数本空いて転がった。
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