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第16話 倉庫

 倉庫の仕事が忙しい。休みも順番に交代で取るようになって来た。一斉に休む日は無くなった。  倉庫全体が24時間フル稼働だ。 シュンの家にも中々行けなくなっていた。 シフトも深夜Cが増えていた。毎日くたくたで古民家に行く余裕はなくなった。  考えてみれば自分の家でもない。一緒に始めたから思い入れはあるが。  シフトもシュンと合うことは少ない。久しぶりにシュンを見かけた。あの酒を痛飲した日から、ずいぶん経っていた。 「カイ、たまには寄ってよ。 崇さんがまた、酒飲もう、って。」 「もう完成間近なんだろう。 出来上がったら見に行くよ。」  社長が身の丈に合わない事を考えて、プラットフォームなどと言い出したから、仕事の範囲が爆発的に増えた。  事務室も広げて人員を増やし、電話とパソコンデスクがズラリとならんだ。  オペレーターが24時間受け付けて電話対応をしている。時差も考えて、世界を視野に市場開発をするのだそうだ。こちらのシフトも大変そうだ。 「アマゾンを目指してるのかよ。」  シュンが父親に文句を言っている。 「優秀なスタッフがたくさん入って来ているんだよ。これから会社をデカくするぞ!」 「はあ? 無知な親父が担ぎ上げられてるだけじゃないのか。」  シュンは社長の暴走に懐疑的だ。 「優秀なスタッフって? どこから集めて来たんだよ。」  俺も話を聞いて、急展開する事業計画に不安を感じた。  田舎者の社長が、会社組織を固めていないうちから流行りの物流に顔を突っ込むのは無茶な気がする。知識が追いついていない。  信頼できる片腕になれるほど息子はビジネスマンとして育っていない。  事業拡大を煽っているのは秘書として雇われた人だ。 「シュン、あの秘書の人は長い付き合いなの? 信頼できるの?」 「うん、田中さんだろ。僕もよく知らない人。 わりと最近入社して来たんだ。秘書として親父にベッタリだよ。」  シュンの古民家を応援してくれて、会社の資金を投入させた人だという。社長を説得して積極的にシュンの趣味を応援してくれたから、シュンは田中さんに感謝しているらしい。  田中氏は、いつの間にか社長もその息子も取り込んで絶大な信用を取り付けている。 「詐欺の常套手段じゃないか?」  考えすぎか?俺は引きこもっていた時、乱読した企業小説を思い出した。  こんな時思い浮かぶのは崇さんだった。大工として日本中を回ったと言っていた。いろんな経験のある冷静沈着な大人だ。  俺よりずっと大人だろう。俺からは、そう見える。 どんな事にも怯まない、スーパーヒーローとかぶっている。俺の憧れになっている。買い被りすぎか?周りに尊敬できる大人がいないから。  そしてそれを口実に古民家に会いに行きたいのだ。会いたい。  次のオフの日に久しぶりに古民家を訪ねた。

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