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第17話 元カレ?

 久しぶりに古民家に来た。 「おーい!」 屋根の上から声がした。崇さんが笑って手を差し伸べている。近くに立てかけてあった梯子を登った。 「こっちに来いよ。ここ座れるから。」  寄せ棟の尾根の所に腰掛けた。 「すごい!雄大な景色だ。海も見える。」  しばらく並んで遠くの海を見ていた。幸せな時間。  見慣れない車が中庭にやって来て停まった。 「こんにちは!森野さんのお宅ですか?」 「あ、山根健斗。どうした?こっちで仕事か?」  梯子を降りて話を聞く。彼は名刺を出した。 『こころ不動産 営業課長 山根健斗』と書かれている。  家の裏からヨシさんが顔を出した。 「ああ、山根くん、久しぶりだね。」  ヨシさんの知り合いか? 「あ、カイくん、シュンくんから聞いてないか? この人はこの古民家を斡旋してくれた古民家専門の不動産会社の山根くん。  崇さんとは昔からの知り合いだよ。」 「ああ、久しぶりだな。 この古民家はすごくいい。 ケントの紹介だったのか。」 「崇の現場だったのか。この家を見つけた時、崇が好きそうだと思ったんだ。  良かったよ。崇に修復してもらって、家も喜んでいるよ。」  崇さんは肩を組んで嬉しそうだ。親しい人なのかな? 俺は胸がチリチリする。 「あ、こちらは森野物流倉庫の人。 手伝ってくれてる田神くんだ。 シュンくんは、まだかな。」 「なんかケンタと買い出しにF市まで行ってるよ。」  デカい冷凍庫を買ったのだ。 「社長の息子さんにお会いしたかったんだけど。 また、出直してくるよ。」  また、崇さんにハグした。 (なんだ、こいつ。馴れ馴れしいな。) 「崇、今度飲もう。車で来ておまえの所に泊まるよ。昔みたいに。」 「よせよ。泊まらなくていいよ。」 「なんだよ。俺はまだ、忘れてないからな。」  肩を抱く手が気になる。距離が近すぎる。 二人見つめ合って、先に崇さんが目をそらした。 (なんだこの空気。まるで元カレ⁈ そんなバカな。)  また、俺の妄想が始まった。

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