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第18話 不二子ちゃん

 もう一台,車が庭に乗り入れて来た。車のボディに『こころ不動産 空き家,古民家買い取ります』と書かれたベンツだ。田舎道を走るのには不向きだ。ボディに社名を入れるならライトバンあたりでいいだろうにベンツか。田舎臭い。 「なんだよ、不二子ちゃんも来たのか?」 「崇の現場、見たくて来ちゃった。 会社のパソコンに出てたから。 崇の名前見て懐かしくて会いに来ちゃった。 アタシも近くで内見のお客さん案内してたんだ。」 (この人、誰?)  ヨシさんが顔を出した。 「不二子じゃないか。昔の男が恋しくなったか?」 「やあねぇ、昔の男じゃないわよ。 アタシが勝手に,昔っから惚れてるだけよ。」 崇さんが出て来て 「現場で変な事言うなよ。 相変わらずだな、不二子。」  俺は呆気に取られて茫然と眺めていた。彼女は不動産屋の社員だと言う。俺の苦手なタイプ。 馴れ馴れしい女は苦手だ。 「この古民家、崇の好きな感じよね。 昔の崇の実家を思い出すわ。」 「いいから、昔のことは。」  崇さんが嫌な顔をした。ヨシさんが 「やめろ。人の個人的な事は言うなよ。」  崇さんは不二子っていう人から、何だか距離を取っている。  山根健斗には肩を組んだりスキンシップがあって親しげだったのに、不二子と言う人にはよそよそしい。 「いい現場ね。いい家だわ。こんな古民家、よく残ってたわね。社長が入れ込むはずね。  売りたくないって言ってたもの。」  そんな事があったのか。確かに状態のいい古民家だとは、俺も思った。 「あ、シュンたちが帰って来たよ。」  シュンとケンタがやっと買い出しからもどってきたようだ。ジムニーが入って来た。 「いやぁ、F市は遠いなぁ。 倉庫型の巨大スーパーマーケットは面白いな。 買いすぎたよ。庭でバーベキューやろうぜ。」 嬉しそうに荷物を下ろしている。 「紹介するよ。山根さんは知ってるね。 こちらは同じ、こころ不動産の不二子さん。」 「こんにちは、白石不二子です。」 「バーベキューやろう。 酒も買って来たし、みんな泊まって行けばいいじゃん。」  広い中庭に煉瓦を組んで簡単な炉を作った。間に大きな網を二段に挟んで作る。崇さんが慣れているようだ。 「ああ、山の中でのキャンプは得意なんだ。 田舎の現場ではいつも野外で料理した。」

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