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第20話 マーケットプレース
社長は全く経験もないのに「マーケットプレース」をやると言い出した。
商品を売る人と買う人の橋渡し。それがプラットフォームだ、とすっかり洗脳されている。
秘書になった田中という人が画策しているようだ。
社長はバブルの頃、1980年代のことだ、広大な土地を持つ資産家として金儲けをした。今は寂れ果てて放棄分譲地となっている山林が、当時は飛ぶように売りに出され、登記用に細かく分筆されて買主がついた。今それらは塩漬け状態で朽ち果てている。持ち主の消息も辿れないのがほとんどだ。ひと区画三坪ほどでは何が出来る⁈
あの頃の夢をもう一度。社長が通販事業に関心を持つキッカケだった。普通に流通倉庫だけをやっていれば良かったのに。
GAFAMが力を持つのは世界規模の視野と、資本を持っているからだ。そして頭脳。
日本の田舎の休耕田や放棄地からは、法律や高い税金に縛られて、大それた事業は生まれない。社長はわかっていなかった。
「秘書の田中さんってどんな人?
親父はどういう繋がりで田中さんを秘書にしたの?信用できる人なの?」
シュンくんが危機感を持って聞いてもうるさがるだけだった。
古民家で楽しく飲み会なんか開いていたが、
ふと、シュンがこの頃気になっていることを打ち明けた。崇さんやヨシさんに現状を吐露した。
「そんな事になってるんだ?
もしかしてもう手遅れかも。」
「ああ、会社は戦後,素人の祖父さんが始めた。
それを親父が引き継いで言われるままに税金を払い、土地を切り売りして続けて来た。」
「意識が低すぎるよ。」
不動産屋の山根健斗が
「詐欺まがいな話だな。一体社長はその秘書とどうやって知り合ったのだろう。」
「うん、なんかサクセスアカデミーとかっていう啓発セミナーだって。」
商工会から案内状が来て、高い入会金を払って参加したらしい。高い事で逆に信用した。
「ウチの社長に聞いてみるよ。
不動産屋は情報を持ってるからね。」
話を聞いたら、社長の高松はあわてて、
「それ、ヤバい奴。倉庫のオペレーター室作るのに金、かけちゃったね。
そいつら全部グルだから。設備屋もオフィス用品の会社も。備品も全部,どこかの倒産した会社の中古品だよ。
不動産屋のネットワークで注意喚起が回ってる。その秘書、怪しすぎる。」
シュンは愕然として
「何で息子の僕に相談してくれなかったんだよ。」
親子の関係が悪いのがバレた。
会社に行って社長を探した。
「ああ、俊太郎、ちょうど良かった。
通販サイトを新しく立ち上げたんだよ。
『マルカリ』っていうんだ。
仕入れも場所も要らなくて仲介手数料がどんどん入って来るんだ。もうネットに募集広告を出したよ。」
どこかで聞いたパクリだ。
「秘書の田中さんはどこ?」
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