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第21話 詐欺?倒産?
(親父、とうとうボケたか?)
会社はかなりヤバい事になっていた。
通販サイトの新会社ごと乗っ取られても、まだスタート前だから被害は少ないと少し安心した。
経理のおばちゃんが駆け込んできた。
「田中さんに、必要経費だからってかなりの額を仮払いしてるんだけど・・大丈夫かな。」
「通販サイトはまだ、キチンとしたシステムも出来上がってないのに募集をかけちゃったんですか?」
商品の入った段ボールが続々と届いている。
「これ、全部事情を話して返品するから。」
ネット販売の他より安い手数料にみんなが飛びついたらしい。
倉庫の仕事と並んで,また余計な仕事が増えた。税理士が青い顔をして事務所に駆け込んできた。
「なぜ、私に声をかけてくれない?
変な動きがあり過ぎる。」
昔からの付き合いのある税理士と,『こころ不動産』の社長とが、揃って駆け付けた。
「土地が動いてるよ。書類が完璧に揃っている。
やられたな。」
倉庫に近い国道に面した1200坪の農地が商用に転用手続きされていた。
アメリカ資本の『ビッグマート』が買い取る事になっている。隣の2000坪の農地は中国人が欲しがっているという。太陽光パネルを敷き詰めるらしい。
「まだ、間に合うか⁈」
不動産屋と税理士が出入りの弁護士を挟んで協議している。真ん中に俊太郎を囲んで。
「社長はどこ行った?」
ヤバいと思って隠れているらしい。
「警察に被害届を出すんだ。
あと、全ての契約をストップさせて不履行手続きをする。メインバンクの凍結もだ。」
口座には引き出された形跡もあって,残高がかなり減っていた。必要経費が払えるのか、瀬戸際だった。
「現金はストックしてませんか?
これから支払いがたくさん出て来ますよ。
品物の返却にこちらが送料を負担しなければなりません。」
経理のおばちゃんと税理士が、淡々と言う。
俊太郎は死にそうな顔をしている。
「朝まで全く考えてなかった。
この急展開はなんだ?」
「詐欺ってこう言うものですよ。
3時までにまだ時間がある。
口座とカード類の凍結をお願いします。」
本人じゃないと手続き出来ないものもある。
「社長は隠れてる場合じゃないよ。
時間との戦いだ。」
寝耳に水、だった。
会社が倒産する,と言うだけではなさそうだ。
莫大な負債を負う。世間知らずの俺でも事の重大さがわかる。
俊太郎は、今日までは社長の息子、明日からは乞食、になりそうだ。
住む家はあの古民家がある。あれまで債権者に取られるのか?
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