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第30話 誘い

 車で崇さんが迎えに来た。土曜日の夜。 倉庫の仕事は日曜が定休になった。もう24時間営業ではない。人並みに休みが取れる。 「崇さん突然ですね。お休みですか?」 「俺も日曜は休むよ。 社長から聞いたよ、日曜定休だって。 それで、カイを連れ出しに来た。  泣かれては困るからね。」 「あ、そんな事,覚えてたんですか。」 「同居人に言ってこい、出かけるって。 今夜は帰らないと。」  俺は犬のように、無い尻尾を振って家の奥に駆け込んだ。 「シュン、出かけて来る! 早紀ちゃんが来るんだろ。 俺、今夜は帰らない❣️」  お気に入りの革ジャンを取って,車に駆け出した。デカいトラック? 「ダットラですか?」 「ああ、ずっとダットサンが好きで、ね。」  もう国内では販売終了したという。海外で人気のトラック。 「崇さんっぽいな。」  助手席に乗り込む。 「ダブルキャブなんですね。」 「現場に行く時、職人を乗せるから。」  何を言ってもカッコいい。座ってるだけで存在感がある。 「どこに行こうか?」  あたりは暗くなり始めている。 「飯食ってからドライブだな。」  運転する崇さんから目が離せない。  あんなにいろんな事があったのに俺には全部他人事だ。友達甲斐がないと思うけど、俺に何が出来るだろう。ただ、与えられた仕事をするだけだ。  あの引きこもりだった頃と何も変わってない、 と言うわけではない。すごい経験をした。犯罪に間近に関わったのだ。人生はほんの僅かのきっかけで、ドラマになる。この限界集落のような町でも、ドラマは転がっている。  俺にはすごく個人的なドラマが今、進行中だ。 (崇さんと二人だけになれる!)  崇さんはハンドルを握りながら俺を見た。 「俺の夢を見たって? 俺の事、何も知らないだろ?」  にっこり笑う崇さんの顔が途轍もなく素敵だった。 「すごい秘密があるんですか? いつだって崇さんは素敵です。」

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