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第31話 秘密のデート
崇さんは、いつもヨシさんのハイエースに乗り合わせて仕事に来ていた事を思い出す。
「崇さんの車、初めて見た。カッコいいです。」
「ああ、俺は酒好きだから、ヨシに乗せてもらう事が多いな。
今日は泊まれるんだろ?朝まで飲もう。
そう言えば、カイは酒が強かったな。」
俺と朝まで飲める奴は少ない、強いな、と言われた。
「どこに行くんですか?」
「どこに行きたい?」
「崇さんは一人暮らしなんですか?」
「ああ、そうだよ。山の方だ。」
「じゃあ、崇さんの家に行ってみたい。」
俺は精一杯の勇気を振り絞って言ってみた。
「そうか?掃除してないよ。汚い所だぞ。」
そう言いながらも連れて行ってくれるようだ。
信じられない。言ってみるもんだな。
「飯はどうする?
家の近所の居酒屋でいいか?
歩いて行ける所だ。」
車が山武杉の森を抜けて、可愛い古民家に着いた。シュンの家より小ぶりで,何か昔話に出て来るような家だった。寄せ棟もこんなにかわいいのがあるんだ。
「わあ、なんか趣がある。」
「ひどいボロ家だったのをコツコツ自分で直して仕上げたんだよ。どうぞ上がってくれ。」
土間から中に入るとやはり田の字に四つ部屋がある。中の一部屋に囲炉裏が切ってあるのも同じだ。奥の部屋はどうなっているんだろう。
車を停めて座敷に上がったが、手を取られてまた外に出た。
「家の中は後でゆっくり案内するよ、っていうほど広くは無いけどな。
とりあえず飯行こう。普通の居酒屋だよ。」
さっきから手を繋いで歩いていく。手を繋ぐのは緊張の極みだ。崇さんの大きな手に掴まって甘えるように歩く。
(このシチュエーションは何だろう。
ヤバいぞ、俺。)
「あ,悪い悪い。つい癖で手を繋いでしまう。」
(癖?誰と?)
居酒屋の暖簾をくぐる。
「いらっしゃい!
あら崇さんいつもの仲間は?
珍しいわね。」
カウンターの奥に並んで座った。
「酒飲むか?何か食べてからがいいな。
悪酔いするから。」
生ビールを大ジョッキで頼んだ。
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