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第37話 秘すれば花
俺はいつも漠然と感じる不安の種が、事実になった、と思った。
この所の俺の引きこもり人生に現れた変化に、
甘えていた。出会いも普通だと思っていた。
不二子さんが教えてくれるだろう、あまり聞きたくない事を。
タカシがなんで,俺なんかを相手にしてくれるのか?考えない方がおかしかった。
そのまま、セックスを教えられ、愛されたと勘違いした。赤の他人と裸で抱き合うなんて、特別な思いがあるはずだ、と勝手に信じてしまった。
お茶を淹れた。不二子さんとケントにゆっくり話を聞きたい。
「ねえ、カイくん、タカシってどんな人だと思うの?」
「はい、大人だなぁ、と。」
「タカシの事知ってるの?」
「いや、別に。大工さんだとしか。」
そうだ俺は何も知らない。
「タカシはいい男でしょ。
私も惚れてたのよ。口数も多くない。
冷たい感じがするけど本当は優しい人。
なんで独り者なのかわかる?」
不二子さんが話すことを聞いてはいけない、と思う。心が警告している。でも知りたい。
毎日、寝食を共にして三ヶ月が過ぎた。
お互いの身体は全部知ってると思う。親よりも近い人。俺の勘違いか⁈
「タカシは、ね。
腕のいい宮大工で将来を嘱望されてたわ。
不動産業界でも有名だった。
町場の仕事をするようになってから、タカシに請け負ってもらいたいっていう得意客が引も切らない。お屋敷を建てるならぜひ小野田崇に、って言うお金持ちがたくさんいるのよ。
彼が古民家に執着するのが不思議よ。
立派な数寄屋造りのお城のような日本建築を望むお客さんが田舎には、いるのよ。」
ある時、ある極道が家を新築するので、名うての大工を探してた。ウチの社長がタカシを推薦したの。
タカシを棟梁に、優秀な職人が集まって施工チームを作った。
「最高の材を使って、金には糸目を付けん。
いくら掛かってもいいから立派な屋敷を建ててくれ。」
会長は、自分の息子に縁談があって、見栄を張る意味でも立派なお屋敷を希望した。
『広域暴力団 関東清和会』の三代目披露の舞台となるはずだった。
同じくらいの勢力を持つ『上州風間一家』の会長の娘と三代目清田栄介の婚姻が進められていた。婚儀が整えば清和会の直参に風間一家が入る話が出来ていた。
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