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第38話 棟梁

 タカシは棟梁として、精鋭の大工チームを立ち上げて、その仕事を請け負った。メンバーにはヨシさんもいた。長い付き合いになる。  数寄屋造りの贅を極めた一世一代の仕事だった。タカシを慕って集まる職人たち。  鳶のカシラが中心となって、左官の棟梁と大工の棟梁、が揃って棟上げの後、棟梁送りをする。  今はほとんどやる人はいない。田舎のお大尽しかやれないだろう。古式にのっとった棟上げだ。  近隣の人々が集まった所に、棟柱と梁の上から 餅やお金を包んだおひねりを投げる。  赤飯と鯛の尾頭付きの折り詰めが配られ、宴席が設けられる。  宴が終わると鳶のカシラたちが木遣りを歌いながら金銀五色の幣を垂らした化粧柱を担いで棟梁の家まで練り歩く。昔ながらの棟梁送りだ。  そうやってタカシの一世一代の屋敷の施工が始まった。  その家では、完成したら、三代目の襲名と婚礼が予定されていた。 「この度はお世話になります。息子を連れて来ました。小野田さんだ。挨拶せんか。」  婚礼予定の息子だそうだ。綺麗な青年だった。 「これは、清田会長。 わざわざおいで頂きありがとうございます。  小野田です。職人一同心を込めて仕事させて頂きます。」 「清和会の清田栄介です。この度は父のわがままで、無理を言ってすみません。」  35才になったばかりのタカシと25才の栄介の出会いだった。  栄介はW大の商学部を卒業して、極道見習いとでも言おうか、三代目を背負っていくための修行をしている所だった。  眉目麗しく、極道の組長になるには若い。 まだ、ひ弱な感じがした。  タカシも棟梁を張るには若かった。 京都での宮大工の修行から、20年。 中学を出てすぐに大工の小僧に入った。  宮大工から町場の仕事に変わり、この町の親方から認められて一人前になった。試験を受けて一級建築技能士の資格も取った。 「なんでこんな田舎に戻って来たんだ?」 「この地域のあまりの寂れように、痛ましくて。 神社仏閣は大手が仕切ってますから。」  親方の元で一生懸命、町場の仕事を学んだ。 尊敬できる佐官職人もいた。鳶のいなせなカシラもいた。昔ながらの職人はみんな尊敬に値する。 しかしみんな年寄りだった。 「この世界も高齢化が進んでいる。 ツーバイフォーとか、簡単なハウスメーカーの工法が幅を利かせている。  この度の清田さんのお屋敷が、最後の棟梁送りになるよ。おまえの花道だ。」 「親方、俺はこの町の昔ながらの古民家に惹きつけられる。この数寄屋造りのお屋敷が終わったら 古民家を勉強したいんだ。 「その考えはいいな。応援するよ。」

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