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第42話 戻れない
顔を離して、栄介は母屋に帰って行った。
酷薄な顔をした崇が残された。ますます厳しい表情になる。
(俺はこの組の若を好きになったのか。
自分を戒めていた、タガがはずれてしまった。)
数日後、上州風間一家、風間源蔵から正式に破談の話がもたらされた。
「若の性癖に問題がおありでは?
調べた方がいい。
娘が恥をかかされる所だった。」
源蔵は怒りを抑えて言った。
「なんですと? 倅に問題があると?
一方的に破談とは?
ウチと戦争でも始めるつもりか?」
上州風間一家はシノギを分けて、関東清和会の直参になるはずだった。
シノギは違えどSグチ一家は風間の後ろ盾だった。長い間、北関東から東京北西部、埼玉の戸田から池袋までSグチ一家のシマウチを守って来たのは風間だ。
風間と清和会の戦争となれば、武蔵連合が動く。関東全体の戦争だ。
これは大きいぞ。落ち着いていた関東をひっくり返すおつもりか?理由を聞こうか?」
屋敷の完成を待って三代目の襲名と婚礼が予定されていた。
一先ず風間源蔵にはお帰り頂いて、会長清田は
破談の理由を調べる。
「おかしな事を言っていた。
栄介の性癖?」
清和会の若頭補佐、今井に調べさせた。
以前から今井は風間に出入りして可愛がられていた良い男だ。話を聞きやすい。
「お嬢、今井です。」
華子に電話している。華子の電話番号なんか知っているのか?
「華子ちゃんは事情を知ってるんでしょ。
あなたの結婚が破談になりそうだよ。」
「尚人さん(今井の名前)
清田会長から聞き出せって言われたの?」
「お嬢、お嬢の問題ですよ。
お嬢が傷ついていないか心配してました。」
「尚人は私の味方でしょ。
話を聞いてもらおうかな。」
「いや、とんでもない事になってるんですわ。
このままでは,大きい戦争になります。
血で血を洗うような。人死がでます。
なんとか手打ちにしたいと清田会長がおっしゃられて。」
「そんな事になるの?
栄介が同性愛者なだけで?」
「えっ? 今、なんて? 若が同性愛者?」
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